桂木桂馬は自他共に認める変態である。
家に帰っても、授業中でも、常にゲームをやっている。
プールの中でも、風呂の中でも携帯ゲーム機を持ち込んで、日々ピコピコとボタンを押す姿は、
それだけでも十分、誰から見ても変態と称して差し支えないが、ゲームの内容が更に彼の変態っぷりを高めていた。
「神様ーっ! このゲームのパッケージに張ってある銀色のシールは何ですか? なんだか数字が書いてありますけど」
「こ、こら、エルシィ! 僕の大切な『煉獄調教2 〜地獄の二週間〜 初回限定版』に触れるなッ!」
世界で最も陵辱ゲームを愛する男。
それが桂木桂馬、高校生なのである。
神のみそ汁
高校生が、大人にならないと買えないゲームを何故やっているのか、とか、
それを人前でやって誰にも注意されないのか、とか、そういった疑問はあると思う。
ただし、それは以下の一言で片づけられる。
『桂木桂馬は変態だから』
彼の教師にとっては甚だ不愉快なことだが、桂木桂馬は知能だけを考えれば天才と言ってもいい。
授業に出てもほとんどゲームしかやっていないはずなのに、
黒板に書いた問題をやらせてみても、ゲームを手放すことなく完璧な正解を書いてみせるし、
教科書を朗読させても、教科書を見ることなくゲームをやりながらそらで語ることができる。
授業を聞け、といっても、喘ぎ声と悲鳴が漏れるヘッドホンをつけたまま、聞いています、の一点張り。
実際、ゲームをやりながらちゃんと話を聞いていて、尚かつ理解している。
授業に参加しろ、ということでゲームをやめさせることができないと判断した教師達の一部は、
実力行使に出るものもいた。
が、いくらゲーム機を取り上げても、いつの間にか桂木桂馬は他のゲーム機を取り出している。
一日、どこに隠していたのか、数十個のゲーム機が没収されたが、
それでも桂木桂馬は下校時にPFPでゲームをプレイしながら帰って行った。
実力行使も駄目、ということで、無理難題を与えてゲームをやめさせようと、
次回のテストで全教科満点を取ったら、ゲームをやることを許可してやる、
もし一教科でも満点を取れなかったら、ゲームを没収する、と条件を出した。
桂木桂馬はその条件を呑み、教師達は難度の高いテスト問題を作成し、結果、
国語、数学、理科、社会、技術の全てにおいて満点を取ってしまった。
教師達のほとんどは苦々しく思っていたものの、約束は約束。
ゲームをやめさせるための作戦が、逆に桂木桂馬にゲームをやる許可を与えてしまった結果に終わってしまった。
不服に思っていた教師は多かったが、ゲームをやっている以外には害が無く、
成績は本当に良かったので、しばらくするとほとんどの教師が彼の存在を無視するようになった。
「ほ、本当にやるんですか? 神様……」
「当たり前だ。もしやらなかったら、僕が死ななきゃならないだろうが」
そんな彼の元に、運命を変える出来事があった。
いつも通り、新作の陵辱ゲームでメインヒロインを三角木馬に乗せて楽しんでいたとき、
突然PFPにメールが送られてきた。
ネット上ではどんな陵辱ゲームでも攻略することができる『堕とし神』と呼ばれている桂木桂馬は、
「どうしても堕として欲しい女性がいる。無理なら絶対受けないで!」とやや挑発気味な文面のそれに、
迷うことなく承諾ボタンを押した。
するとどこからともなく、箒を片手に、羽衣を纏った悪魔の女の子『エルシィ』が現れ、
地獄から逃げ出した旧悪魔の魂である『駆け魂』を集めることになってしまったのである。
駆け魂は心に隙間のある人間の女に入り込み、その子供として転生しようと目論んでいる。
それを防ぐため、エルシィを初め、地獄の多くの新悪魔達が駆け魂を確保せんと、
世界各地でバディー……人間の相棒とともに、『駆け魂狩り』を行っている。
駆け魂を捕まえる契約をしてしまったために、もしエルシィの協力を拒んだら死ぬことになった桂木桂馬。
現実の女の不完全さに絶望しきっており、自分の命さえ諦めかけていたものの、
やはり惜しいと、来週発売する鬼畜陵辱ゲー(地下室監禁物)をやるまで死ねるか、と一念発起し、
エルシィに協力することにしたのである。
「それに、大丈夫だ。
あの手のタイプは……まあ現実の女ごときがゲームの女性と同じワケがないが、『陵辱競技』で堕とした経験がある」
「う、うう……本当に大丈夫なんですかー」
「うるさいな、僕の命も掛かっているんだ、早くやれ」
桂木桂馬の導き出した『堕とし方』は、今までやってきたゲームを忠実に再現することであった。
現実はクソゲーで、ゲームこそが優れていると認識している桂木桂馬にとって、
優れているゲームと同じシチュエーションにすれば、クソゲーな現実だとしても同じ結果になるであろう、と考えたのだ。
悪魔の美少女であるエルシィの持つ羽衣を用いて、小道具を用意し、
ゲーム通りに進めようとしているのである。
最初のターゲットは、高原歩美。
桂木桂馬のクラスメイトにして、陸上部のエースの女の子だ。
いつでもどこでも走り回る元気な女の子で、
年頃でありながら色恋沙汰よりも陸上の方に興味がある、ショートヘアーがかわいい、スポーツ少女なのである。
近づきがたいオーラを放つ桂木桂馬に正面切って『オタメガネ』とあだ名で呼び、
あまつさえ掃除を押しつける、裏表のない快活な少女が、重度な鬼畜陵辱ゲーマー『桂木桂馬』のターゲットにされていた。
部活ですっかり遅くなった帰り道、人気のないところで一人になるまで、
エルシィが羽衣で作り出した白いワゴンでじっくり追いかけていった。
「……今だ、エルシィ。作戦開始」
「ううっ、やっぱり普通に恋愛をした方がいいんじゃないですか、神様」
「だから何度も言っただろう。僕は恋愛ギャルゲーはカバーしていない。
ファンディスクで監禁ゲーが出た場合、ファンディスクの補完としてたしなむ程度だが、
自由度が高すぎてユーザーに不親切極まりないクソゲーの『現実』に即応できるほど知識があるとはとても言えない」
エルシィは観念した様子で、そっと白いワゴンの形をした羽衣を歩美の横にまで進めた。
「す、すいませんー、この近くにガソリンスタンドってありますか?」
エルシィは白ワゴンを寄せると窓を開き、軽い口調で尋ねた。
羽衣を使って少女ではなく二十代の男に外見を変えているため、正体がばれることはない。
人気のないところで不意に声を掛けられたことに歩美はうろたえたが、
桂木桂馬が監督して作りあげた、『警戒心を与えられない顔』で話かけられたせいか、すぐに警戒を解いた。
「も、もうガソリンが空で……この辺りは初めてで道に迷って」
「ああ、ガソリンスタンドなら、この道を真っ直ぐ行ったところにありますよ」
「本当ですか? ありがとうございます、本当に助かりました」
白ワゴンの中から、一連のやりとりを見ていた桂木桂馬はエンディングが見えた、と口をゆがめて一人つぶやいた。
ワゴンの後部座席はマジックミラーのせいで、中から外は見えるものの、外から中は見えないようになっている。
車が発進する素振りを見せたその瞬間、桂木桂馬は勢いよくワゴンのスライドドアを開いた。
それと同時に、ワゴンの中から羽衣人形が飛び出す。
「きゃっ、な、何……むぐっ!」
「エルシィ、ターゲットを抑えた。目撃者が出る前に急いで逃げるぞ」
羽衣人形に体を押さえつけられ、悲鳴を上げる前に口を塞がれ、
歩美は抵抗することもできずに白ワゴンの中に押し込まれた。
桂木桂馬は、歩美が白ワゴンの中に入るのを確認した後、すぐにワゴンのスライドドアを閉める。
同時にエルシィは白ワゴンを動かし、その場から退散する。
「よし、事前に打ち合わせていたポイントに行くぞ。安全運転でな。
ここで事故って警察なんかに来られたら、たまったもんじゃない」
「わ、わかりました……」
エルシィに指示を出した後、桂馬はゆっくり振り返った。
羽衣人形に手足を縛られ、口にガムテープを張られている歩美が、むぅむぅと唸りながら体をうねうねと動かしていた。
変装していない桂馬の姿に気づいて、涙が浮かんでいる目で必死ににらみつけている。
「うん……やっぱり現実の女はクソだな。
ゲームの女だと、多少は心が痛む……その痛みがまた『イイ』んだが、
現実の女だと知り合いをこんな目に遭わせても何の気持ちも沸かない」
は虫類を思わせる冷徹な目で桂馬は歩美を見下ろし、歩美のことをまるで人として扱っていないような台詞を吐いた。
桂馬はそのままつまらなさそうな表情を浮かべ、夕日が沈んだ後の暗い車内で小さなライトを付け、
常に持ち歩いているPFPの電源をいれて、攻略中の鬼畜陵辱ゲームを黙々と始めた。
街から少し離れた山の中の小屋。
その前に白いワゴンをとめ、中から歩美を引きずり出した。
歩美は必死の抵抗をするも手足を縛られているため、逃げることができずに運ばれていく。
小屋の中の暗い階段を降り、裸電球の頼りない明かりに照らされた地下室の中に歩美は放られた。
桂馬はゆっくりと近づき、にらみつけてくる歩美の口に張ってあったガムテープを剥がした。
「お、オタメガネッ! な、なにするつもりよ、こんなところに連れてきて!」
「……うるさいな、ここは見知らぬ場所に連れてこられた恐怖で泣くところだろ。これだから現実は……」
「さっさと私を帰しなさいっ! 犯罪よ! 絶対に許さないんだから!」
誰にも聞かれないとはいえ、大声で悪罵されることに桂馬も嫌気がさしたのか、
歩美の言葉を無視して、地下室の隅においてあったものをひっぱりだした。
がしゃ、と音を立てて取っ手のついた小さな箱が落ち、
その脇には奇妙な形状をしたボンベと、そのボンベにつながるチューブの束があった。
「な、何なのよ、それは」
「これか? これはガスバーナーだよ」
歩美は、全身から冷たい汗が湧き出るのを感じた。
この状況で、そのガスバーナーをどういう風に使うのか、想像したくはないが、嫌でも想像させられた。
無意識のうちに体が震え、今までどうにかして抑えてきた震えが、歯の根の合わない程度に高まる。
桂馬は手に持ったガスバーナーに火を付けた。
ゴーッ、とガスが漏れる音が辺りに響き、ガスバーナーの先端から青白い炎がちろちろと揺れる。
「いつまでも抵抗するやつの足を焼くために使うガスバーナーだ」
「や、やめてっ! ゆ、許してっ!」
桂馬の言葉は歩美にとって到底信じがたいものだった。
まさかそんな目に遭わされるとは想像もしていなかったのだ。
それ故に、歩美は桂馬の言葉を理解することはできなかったが、
無理矢理拉致されたことと、目の前でガスバーナーに点火されたことの精神的プレッシャーが、
歩美の生理的な嫌悪感を多大に刺激し、咄嗟に許しを乞うた。
数秒おいて、桂馬の言葉が脳みその中を駆けめぐり、真に理解できたとき、また再びおののいた。
「ご、ごめんなさい、あ、謝るからっ、お願い、やめて」
さっきまでの抵抗はなりを潜め、歩美は芋虫のように這いずって桂馬から逃げようとしていた。
とはいえ、それほど広いとは言い難い地下室の中であるため、
少し後ろずさっただけで、すぐに壁に当たってしまう。
出口は反対側にあるが、部屋の中心には火のついたバーナーを手にした桂馬が立っている。
たかだか数メートルの距離が、歩美にとって決してたどり着けない長さに思えた。
不意に、桂馬の手にバーナーの火が消えた。
桂馬が反対の手でガスボンベのバルブを捻っていた。
「まさか、最初っからこれを使うつもりはないよ」
バーナーをそのまま地面に落とすと、もう一つの箱をいじった。
脇に突いている留め金を外し、箱を開くと、中から錆びの匂いがあふれ出した。
桂馬は慣れた手つきで、中の物を一つ一つ取り出していく。
たくさんの錆びた釘がはいったケースにとんかち、ドライバー、ニッパ、針……そして、ペンチ。
まるで閻魔様が嘘つきの舌を抜くペンチを小さくしたペンチを掴むと、
桂馬はそれを震える歩美の目の前で見せびらかすように持った。
「まずは、これで爪を剥がして、それでもまだ言うことを聞かないやつはさっきのバーナーで焼いてやる」
どこか虚ろな瞳をした、桂馬が独り言を言うかのようにぶつぶつ語るところを見て、
歩美は、授業中に変態ゲームを平然とやるこの男ならば本気でやりかねない、と感じ取った。
桂馬はしばらく手に持ったペンチを眺めていたが、また再び工具箱から出したものを戻していく。
留め金をぱちんと閉じ、元々置いてあったところに戻すと、身動きすらとらなくなった歩美の近くに寄った。
「それで、抵抗するか、歩美」
「し、しない……しないから……」
「そうか」
ただただ震えることしかしない歩美を見て、桂馬は本当に抵抗の意思を失ったと確信し、
歩美の手足を縛るロープをほどいた。
「じゃあ、まず、舐めろ」
桂馬は自分のズボンのファスナーを降ろし、一物を露出させた。
一生二次元の女と添い遂げると誓っていた桂馬だが、その一生が終わりかねない、ということで覚悟を決めていた。
まだまだ現実女に対してぴくりとも反応しない、それを、震える歩美の顔にすりつけるように押しつける。
「い、嫌っ!」
恐怖に震えている歩美だったが、目の前で晒されたものを反射的に拒絶した。
顔を背け、自由になった手で払いのけた。
もちろん、桂馬がその行為を許すわけがなく、左手で歩美の左手首を掴みあげる。
半開きになった歩美の左手の薬指を、桂馬は右手の親指と人差し指で先端をつまんだ。
「ギリギリギリギリギリ」
力を込めて、歩美の左手の薬指をつまみ上げる。
口でギリギリギリギリとペンチで捻る音を再現する。
「ブチッ」
力を入れてつまんだまま、右手を引っ張った。
歩美は鋭い痛みを与えられるのと同時に、自分の薬指が解放された。
明らかな警告……これ以上言うことを聞かなかったら、この指の爪を剥がすぞ、ということを、
言葉ではなく行為でよって警告をしてきたのだ。
桂馬は無表情で手首を掴んでいた右手を解放し、また再び一物を歩美の顔に擦り付ける。
「舐めろ」
「ゆ、許して、オタメガって言ってたことは、謝るからっ!
あ、あと、掃除押しつけたこともっ! 今度からあんたの分の掃除を全部私が代わってあげるからっ!」
歩美の必死で懇願する様を、桂馬は冷めた目で見下ろしていた。
軽く右手を挙げて、振り向かずに言った。
「おい、エルシィ。工具箱の中からペンチを持ってこい」
「い、いやっ! ごめんなさいっ、ごめんなさいっ! なんでも言うこと聞くからっ!」
「今聞かなかったじゃないか。僕は舐めろ、と言った。
それなのに歩美は余計なことを口にしただけで、舐めることなんてしなかった。
お前は犬か? 人の言葉を理解できない犬なのか? そうじゃないだろう?
僕の言葉を理解して尚、それを行わないっていうんなら、もう爪を剥がすしか方法がないじゃないか」
「し、しますっ、舐めますからっ! 酷いことしないで……」
桂木はこれみよがしにため息を吐いた。
鬼畜陵辱ゲームマイスターたる桂木桂馬にとって、この程度の屈服は屈服のうちに入らなかった。
「僕が『しろ』といったときにしなかったんだ。今からしても、合格点はやれないな」
「ゆっ、許してください! なんでもしますから」
「それだったら、ちゃんとお願いしろよ。
どこを、どうするのか、はっきり口に出して、懇願しろ」
歩美は頭を懸命に働かせようとしていたが、極度の緊張状態に囚われてうまく考えられなかった。
まるで足を絡め取られたまま走ろうとしているかのように、思考が追いついていかない。
時間だけが一秒、二秒と過ぎていくが、あうあう、と口を開いたり閉じたりすることしか出来ない。
ゆっくりと桂馬の表情が不機嫌なものに変化しているのを見て、更に慌ててしまい、
うまく舌が回らない。
「なっ、にゃめっ、いたっ、にゃめさせてくらさいっ!」
舌を噛みつつ、なんとか言い切った。
目からは涙が流れ、声はかすれている。
歩美は、出せる限界の力を持って、口を開いた。
「ちっ」
それを桂馬は舌打ちで答えた。
人を人とも思わない目で、淡々と歩美を見下ろしている。
実際に、桂木桂馬は現実女なんて評価するに値しないと考えている。
今、こうやって歩美を拉致したのも、自分が生き残るため、という目的以外何もない。
「わかった、舐めていいぞ。
ただし、歯を立てたら、歯を引き抜いてやるからな」
「うっ……ううっ……」
再び目の前にきた桂馬のペニスを、歩美は恐る恐る口に近づけた。
幼い頃に父親と一緒にお風呂に入ったとき以来、一度も見ていない男性器に脅えながらも、
舌を延ばし、まだまだ萎えているものの先端に触れる。
味は特に感じられなかったが、不意に猛烈な嫌悪感に襲われる。
胸元からこみ上げてくる嘔吐感に苦しくなり、思わず体を縮ませようとしたが、
それをぐっと押さえつけた。
相変わらず虫けらを見るような目で見てくる桂馬を、なんとか満足させようと、
ちろちろと舌の先端を動かして、ペニスを舐め続けた。
「……もういい、くわえろ」
「……んっ……」
歩美はうろたえもせず、口を開いて桂馬のペニスを口に含んだ。
やはり桂馬は下手な舐め方に満足していなかったのか、まったく勃起していないままだった。
すぐにフェラチオを行う決心がついたものの、全く嫌だったというわけではない。
むしろ、さっきまでの行為よりも更に激しい吐き気に襲われていた。
が、しかし、桂馬がぴくりとも反応していなかったことを考え、
満足しなかったら、腹いせに何をしてくるかわからない、という恐怖が歩美を積極的にさせていた。
もし、万が一、自分の足に大きな傷を残された場合、走ることが出来なくなるかもしれない。
走っているとき、体で風を切る心地よさと、走り終わった後の満足した気怠さを一生失うことは、
歩美にとって生涯の楽しみのほとんどを奪われるのと同義だった。
歩美の性格をパラメータ別に割り出していた桂馬は、
まず初めに「バーナーで足を焼く」と言っており、それの効果を十分に引き出していた。
じゅぷじゅぷじゅぷじゅぷじゅぷじゅぷじゅぷじゅぷじゅぷじゅぷ
顔を懸命に前後させる。
桂馬のペニスが、舌の上を、喉の奥を、何度も何度も往復する。
歩美の友人であるちひろが見ていた女性雑誌の内容を、必死に思い出し、
どうすれば目の前の男が喜ぶのかをひたすら考えていた。
「へたくそ」
そんな頑張りを全て無視するような言葉を桂馬は投げつけた。
桂馬は自分の足の先端で、歩美の足首を軽く踏んづけた。
咄嗟に歩美は自分の足を庇うように動いたため、口からペニスが離れてしまった。
「ご、ごめんなさいごめんなさい……んっ」
快活な少女である歩美も、どこか心の中でオタクである桂木桂馬を馬鹿にしていた。
その馬鹿にしていた桂馬のペニスを、今、歩美は満足させようとくわえている。
屈辱以外の何物でもないその行為は、今や恐怖によってためらうこともなく行われていた。
この場の誰も気づいていないが、ひっそりとある現象が起きていた。
歩美の下半身を覆うスカートのその下、白い下着のボトムに微かな湿り気があったのだ。
これからレイプされてしまうということを知った歩美が見せた、生理的な反射としての防御反応かもしれないが、
桂馬のペニスをくわえて、口の中で必死に奉仕している最中、歩美の秘唇は誰にも気づかれずに潤っていた。
歩美の懸命の頑張りのおかげか、心なしか桂馬のペニスには通常時よりも血が通ってきた。
海綿体がわずかに膨張し、口の中にあっても反応がわかる大きさにふくれている。
歩美は体中の全ての神経を口の中に集中させるつもりで、懸命に桂馬のペニスを口の中で感じ取っていた。
どこを刺激すると、どう反応するのか、定期テストの前日一夜漬けをしたときよりも遙かに真剣に覚えようとしていた。
カリの裏を軽く舌で舐めたとき、わずかに桂馬のペニスが上下に揺れた。
その反応を見逃さなかった歩美は、再び舌をカリの裏に這わせる。
「う……」
そのとき、今まで全く口を開いていなかった桂馬が短いうめき声を上げた。
しかし、それは悦びというよりかは、苦しげなものが含まれていた。
強くしすぎちゃだめなんだ、と歩美は思い、そっと口からペニスを抜いた。
そして、そっと、ペニスを持ち上げて、舌を突き出し、まるで恋人にキスをするかのように優しげにカリの裏を撫でた。
びくんびくんと跳ね、また一回りペニスが大きく膨張した。
歩美は少し嬉しくなりながらも、また再びペニスを口に含んだ。
それが切っ掛けになったのか、数分と立たずに口の中のペニスが限界まで膨らみ、
張りつめた緊張が解かれるのが、もうそろそろだとわかるほどになった。
このままうまくやれば、桂馬をイかせられるかも、と思ったとき、歩美の頭に何かが触れた。
途端、喉の奥底までぐっとペニスが突き立てられる。
カリ首が喉の奥の壁を擦り、うっとうめき、危うく歯が立ちそうになった。
歩美の頭に触れた物は桂馬の手だった。
桂馬は一物をくわえさせたまま、歩美の頭をぐっと引き寄せたのだ。
もちろん、一物を喉の奥まで押し込むだけで終わるはずもない。
今度は歩美の頭を後ろに持って行った。
一物の竿の部位に、歩美の頬、舌、唇がこすりつけられる。
粘液と粘液が摩擦する快感に、ぞくぞくと背筋の毛を逆立てながら、
亀頭がぎりぎり口から出ない部位で止める。
「んぷっ」
そしてまた押しこむ。
歩美に奉仕させたかと思うと、今度はオナホールのように道具として扱う。
拒絶するのを防ぐため、桂馬はひたすらガンガンと歩美の頭を上下に振った。
「んっ、んっ、んっ、んっ、んんっ、んっ、んっ、んっ、んっ、んっ、んんんッ!」
奥底。
同い年のクラスメイト。
何よりも走ることが好き、といったスポーツ少女の、キスもまだしていない唇を蹂躙する。
現実女にわずかなりとも欲情しているということが嫌になり、
桂馬はお気に入りのゲームのワンシーンを思い浮かべて、暴発させた。
喉の最も奥の部位に差し込んでの射精。
歩美は口の中に広がる熱い液体を感じたとき、一瞬意識を飛ばした。
気が付くと、床に精液をはき出し、むせていた。
吐きたい、と思えど、喉の奥底で胃液がストップしてしまい、
鎖骨の下辺りになんともいえない痛みが走っていた。
「これで……お、終わった……の……」
そんなはずがない、と心の隅で思っていても、思わず出てしまった言葉。
それに対して、桂馬は鼻で笑った。
「そんなわけがないだろ。むしろ、まだ、始まったばっかりだ」
歩美がゆっくり顔を上げて桂馬を見ると、桂馬の手には奇妙なものが収まっていた。
皮の薄い板状のものがいくつもついた棒状のもの。
桂馬はそれをひゅっひゅと音を立てて振っている。
軽く手前の机を叩くと、ぱーん、と小気味よい音が響いた。
明らかに『人を叩く』ことを主目的として作られたその文明の利器を見て、
歩美の心は絶望に染まった。
いや、歩美の心の一部で絶望に染まることを拒絶したものがあった。
とはいえ、それは歩美の本当の心の一部ではない。
駆け魂と呼ばれる精神寄生体だった。
今は、歩美の心の隙間に、絶望が入りこむことを拒絶しているが……。
「小生意気な娘に、自分がただ肉棒をむさぼることしか能のない醜い雌豚だということを教え込んでやる」
駆け魂が絶望によって押し出されるのも、そう遅くはないようだった。