番外編 『魔法世界にて、ちう』 中編

 ここしばらくずっと感じている心地よい微睡みの中で、不意に俺のセンサーに引っかかっ た。
 魔法使いともなると自分自身の肉体及び精神コントロールが一般人とは異なる領域に達する。
 そうなると寝ているのに、起きているときとほとんど同じ感覚を持つ技能というものを体得することが出来るようになる。
 俺のような元工作人ともなれば、この技能は体得していて当然のものとなっている。

 そうとも知らず、俺の感覚がカバー出来る範囲内で動きを見せる人が一人。

 表面的な意識を覚醒させても、すぐに目を開かない。
 どうせ捕まえるのなら現行犯のところがいい。
 それに、ベッドはまだ暖かく、外気は寒い。
 服なんて着ているわけがないから、剥き出しの肌をそこに晒すのは嫌だった。

「きゃっ!」

 意外な声を聞いてしまった。
 俺はベッドの中から手を伸ばし、魔法を使って、俺のすぐ近くで動いていたやつを捕まえた。
 年齢の割には発達した体を引き寄せ、赤みのかかった長髪をまとめて掴んで、引き寄せる。

 薄く目を開くと、のけぞっている姿を見せた。
 今まで前に行こうとしていたのに、突然、後ろに引っ張られ、髪の毛を掴まれていたのだから、驚いているのだろう。
 軽いパニックに陥っているのか、抵抗すらうまく出来ず、変な風に体を動かしている。

 どさり、とベッドの上に尻餅を付き、俺の体の上に落ちてきた。
 髪の毛がさああと俺の胸に落ちる感覚があり、丸い体の部位を俺の顔のすぐ近くに引き寄せた。

「何、逃げようとしてるんだよ」

 そう一言囁くだけで、俺の上に乗っているやつは、抵抗にもなっていない抵抗を止めた。

 俺も、薄く開いていただけのまぶたを上げ、体を起こした。
 手を伸ばして、俺の上に乗っていたものを、適当にまさぐる。
 刺される危険はないが、刺してしまう、もしくは刺さってしまう可能性を配慮して、だ。
 逃げる、ってことは、この魔法世界の世間の荒波に飛び込むってことだ。
 魔法の『ま』の字も知らない小娘がそれをするならば、ちょっとしたツールが必要になってくる。
 もちろん、そのツールっていうのも、全くの気休めでしかないのだが、それでも何も持っていかないよりかは大きく違う。
 ナイフ一本あれば、切り開ける可能性はゼロじゃなくなるからだ。
 切り開く対象がなんであれ。

 俺の予想は外れて、刃物を隠し持っては居なかった。
 そうなると、やっぱりこの小娘を逃がさなくてよかった、と改めて思えた。

 何も言わず、俺はちさめの体をまさぐり続けた。
 今度は、隠し持った何かを探るためじゃなくて、その体の感触を楽しむためだ。
 俺が買ってやった、魔法世界のこの地域で一般的な上着とズボンの下には何も付けていない。
 恐らく、下着を着けるために時間を使ってしまうと、俺が目覚めてしまうかもしれない、と考えたんだろう。
 同じ理由で、ズボンにはベルトが通っていない。
 こっちの方は、ベルトの金具がふれあう音で俺を起こしてしまう可能性を排除したかったに違いない。

 右手を上着の中に入れ、やわらかい腹の肉を撫でた後、膨らんだ胸をやや乱暴に揉みし抱く。
 手に吸い付くようなそれを、ぐにぐにと上下左右から双方に圧力を掛けた後、登頂の部位をつんとつついた。
 さっきまでの情事の余韻か、もしくは布の服にこすれたせいか、先端は少し膨らみ、勃っていた。

 左手はズボンの中に遠慮無く差し入れる。
 ベルトをしていないおかげで、するりと入り込み、指に蒸れた草むらが触れた。
 こちらは露骨に、さっきの情事の名残があり、ねとねととした液体がそこかしこにへばりついている。
 蛇……いや、ミミズのように指を動かし、ズボンの下にあるものの概要を察知すると、中指をそのまま遠慮無しに突き入れた。
 流石にこれは堪えたのか、ちさめはびくびくと体を震わせた。

 

「と、トイレに行こうと、し、してたんだよ」

 俺がちさめの首筋に顔をうずめ、そこの臭いを嗅いでいるときに、ちさめがふざけたことを言ってきた。
 ちさめの首は、つい一時間前の情事と、二十秒くらい前の逃走劇のせいか、汗にまみれていた。
 すっぱい臭いがするが、それでも嫌いな臭いではない。
 なんで女の汗のにおいってのは、こんなにも興奮させるもんなのかなあ、といつも思う。

 ちさめの言葉は、色々と駄目だった。
 こんなあからさまな言い訳では、子供ですら騙されない。
 信憑性ゼロ、いっそのこと黙っていればいいのに、と思わせるほどだった。
 だけどまあ、俺の腕の中で、俺に与えられるだろう罰に震えて、わずかな一縷の望みを掛けて必死にひりだした言葉は、その内容がどんなものであれ、中々乙 なものだ。
 そこまでお約束な形を提示してくれたのならば、俺もその約束に応えてやるのが礼儀ってもんだろう。
 微かな光を後腐れもなく断ってやる、という形でな。

「お前、さっき散々しただろう? ベッドの上で」
「……」

 エドのいにっきがあったら、今のちさめがどんなことを考えているのかを見ただろう。
 いや、別にエドのいにっきを見なくなってちさめの考えていることなんておおよそわかる。
 だけど、敢えて、ちさめを腕の中で抱きながら、ちさめの考えていることをちさめと一緒に見るというのが楽しいわけだ。
 今やエドのいにっきは、俺のマスターの消失とともに無くなってしまった。
 それを悔やんでも仕方ないだろう。

 それに、エドのいにっきが無ければ無かったで、それはそれで新鮮なことも楽しめた。
 今までエドのいにっきを持っていたために、あまりにも頼りすぎていた。
 普通の人間がやるように女を抱く、という行為が、逆に俺にとって未知の体験だったわけだ。
 前戯一つとっても、面倒くさいことこの上なかったが、試行錯誤はそれなりに楽しかった。

「……ッ」

 ちさめが、微かに震えた。
 ちょうど俺の中指が、ちさめの膣内の弱点……神経の最も通っている敏感な部位に触れたからだ。
 散々嬲り倒していたので、敏感すぎて痛みを感じさせることはなく、かといって鈍くなったわけでもなく、より大きな快楽を引き出す間口の広さがある。

 ちさめは、今更どんな見栄を張りたいのかよくわからないが、俺の指に抵抗しようとしていた。
 歯を食いしばり、口から声が出ないように、下半身に力を入れるのは、かえって刺激が強くなることを学習したのか、ほどよい緊張を保っている。
 そう抵抗されるとついついいじめたくなるが、まあ、今はいいや。

「ああ、そうか、トイレってのは大きい方だったのか」

 少し乱暴に俺は手を引っ込めた。
 乱暴にずぼずぼと指が抜け、その刺激でちさめは体をのけぞらしたので、そっと受け止めてやる。

 前述の通り、ちさめは俺との情事の間に何度も何度も失禁している。
 今、俺が寝ているベッドに黄色い液体を浄化する魔法を何回掛けたか、もう覚えていない。

「じゃあ、今度は、そっちの方にも配慮することにするよ」

 しとどに濡れた中指で、ちさめのへその下をぐいぐいと押した。

「わっ、わかったッ! わかったよ、くそッ! 逃げようとしてたっ!」

 女ってのはわからないもんで、今まで散々嬲られてきたくせに、排泄物を無理矢理ひり出させられることだけは嫌で嫌で仕方ないらしい。
 一度見せてしまったら、もう野となれ山となれ、という風にはならない。

 と、そこまで考えて思い直した。
 じゃあ、俺が例えばむさくるしいホモ男にそんなことをされたらどう思うかを考えてみた。
 ……うーん、まあ、いいか……対処のしようはあるだろうが、そのときになるまで想像すらしたくはない。

 とにかく、ちさめはあっさりと逃亡しようとしていたことを認めた。
 もちろん、もしこのタイミングで認めなかったら、何が何でもちさめに浣腸を何本も打ち込み、屋外に連れ出して……そうだな、繁華街の路地裏にでも引っ 張ってきて、そこで両手足を縛って、その場で脱糞させるつもりだった。
 簡単に折れたことは、ちさめ的には正解だった、というわけだ。
 まあ、俺の楽しみ的には不正解なわけだが。

「よし、じゃあ、ちさめ。それに対しての申し開きは?
 もうちっと具体的且つ世俗的な表現を使って言うと、『どう落とし前をつけてくれる?』」

 この台詞を、起き抜けで頭がぼうっとしているときに吐けたら素敵なんだろうが、残念かな、俺の思考は今、完全にクリアだ。
 こればかりは、鋭すぎる感覚を持つ自分の体質を恨むしかない。

 いささか芝居じみた言い回しで、ちさめに伝わったかどうかが不安だったが、ちさめは意をくんでくれたようだった。

 俺にとって、ちさめの逃亡は不愉快なものだ。
 ちさめはそのことを理解しつつも、逃亡することを決めた。
 別にそれはいい。
 なら、それが失敗した今、俺の不愉快を打ち消すことをしろ、と言っている。

 この指示には別に従わなくても構わないが、それならそれで俺は俺の自分の不愉快を打ち消すためのことを、勝手にちさめの体を使ってするぞ、と言う脅迫で もある。

 今や、ちさめの頭の中では、近くにある何かをつかみ取って、俺の顔にぶち当て、俺がもんどりうっている悶えているところから逃げ出し、しなやかな足技で 俺をぶちのめして逃げる、なんてことは無くなっている。
 散々嬲ってやったのだから、ちさめは二つの理由で抵抗する意思をなくしている。
 一つ目は俺に抱いている恐怖で、もう一つは俺が目覚めさせた性感で、だ。

 口では強がっているが、ちさめは俺に恐怖している。
 ちさめの体をまさぐるように掴んでいる腕は、ちさめの震えを感じ取っている。

 逃げようとしたことは、もちろん、今回が初めてじゃない。
 過去に二度逃亡しようとして、その度に失敗している。
 そして捕まえた後、二回とも『お仕置き』をしている。

 一回目のお仕置きは、今まで手をつけていなかった後ろの処女を頂いた。
 もちろん、頂く際にすべき処置もきちんとした。
 全裸で、たらいの上に座りながら、涙と鼻水でぐちゃぐちゃになりつつも笑顔を浮かべてピースをしている写真と、望むポーズをとったらトイレに行かせてや る、という俺の約束が嘘だったことを知って絶望している写真と、最後に必死にカメラのレンズを隠そうとして失敗して、たらいの中にぶちまけているみっとも ない姿の写真が収穫品だ。

 二回目のお仕置きは、もっとシンプルだ。
 一回目のお仕置きのときに撮影した上記の写真三枚を、ネットのちさめのブログ(電子精霊の話によると、ちう、とかいうHNらし。名前の千雨の別の読み方 だな)に公開してやる、と脅して、裸にコートのみという露出狂スタイルで繁華街を歩き回させ、そこいらの男らを集めて、路地裏でオナニーショーをさせた。

 そして、三回目だ。
 そろそろネタが尽きてきたような気がした。
 普通ならお仕置きになるようなことは、あらかた普通にやってしまったし、自分で考えるのが面倒にもなってきた。
 それなら、ちさめに直接聞いてみようじゃないか、というわけだ。

「……く、くちで」
「口で?」

 ちさめは言った。
 短いけれども、濃厚なおつきあいをしてきたおかげで、ダンマリを決め込むようなことはしなかった。

 俺は普通にちさめを犯すときに、何度も何度もちさめに問いかけている。
 大抵、無理矢理犯されるのと、自分で動くの、どっちがいい? などというちさめにとって両方選びたくないような問いだ。
 そういう問いに何も答えなかったときに、俺は一番過酷なことをしてきた。
 無理矢理犯した後、騎乗位で自分で動かないと尻をひっぱたいたり、とかそんなことを。

「くちで、する、から……ッ」
「何を?」

 かすれた声でちさめは言った。
 けど、口でする、ってのはどういうことだ?

「だからっ、口で、する……」
「?」

 よくわからない。
 口で何をするっていうんだ?
 目隠ししたまま、ピーナッツを数メートル上に投げて、口でキャッチする、とかそういう芸をするとでも?
 いやいや、そんなことされてもなあ。

「お前の、その……お、おちん……ちん、を、口で、こう……する、んだよ」
「……?」

 ちさめは何か説明しようとしているが、一向にわからない。
 口でするって、やっぱり何をなんだ?

 ……んー……。

「もしかして、フェラするから許してくれって言ってるのか」

 ちさめは耳を真っ赤にして頷いた。

 俺は一瞬呆気にとられて、それで次の瞬間笑いだしたくなってしまった。
 なんでまた……こう、お仕置きでフェラなんて言い出したんだろう。
 フェラのどこがお仕置きなんだ。
 毎朝、毎晩、しているじゃないか。

 いやいや、笑うところじゃないぞ。
 ちさめが、自分で自分のお仕置きを決定する妥協点ってのが、フェラチオってわけなんだから、どんだけ俺に抱かれるのが嫌だ、っていうことだ。
 小憎たらしいが、やっぱり、少しかわいいと思ってしまう。
 普段は大人ぶっているというか、ひねているというか、思春期特有の自分を取り巻く環境を見下すような性格をしているちさめが、到底理に適わぬことをやっ たわけだからな。

 髪の毛をわしづかみにして乱暴に引き倒し、部屋中引きずり回した後で、冷たい床の上で失神するまで犯したくなってくる。
 良くも悪くも、そんな衝動がぐっとこみ上げてきた。
 が、この衝動も抑えた。
 なんというか、さっきから俺、色々と抑えすぎだな。
 開放したとしても何一つ問題ないのに、押さえ込みすぎるのは体に良くない気がしてきた。

 ちょっとだけ理性の蓋を外して、ちさめの胸の先端を、親指と人差し指でぎゅっと潰した。

「ふあっ……だ、駄目なんだよ! そろそろ本当にヤバくなってきてっ!」

 ちさめは、俺の腕の中であたふたと暴れ始めた。
 今、俺はちさめに与えるお仕置きの内容を考えていて、乳首をつまんだのはただ手持ちぶさただったからだ。
 ただ、ちさめは俺が怒っていると受け取ったらしい。
 一応、本人にもフェラだけで許して貰えるとは、思ってはいなかったらしい。

 けど、ヤバイって言ったのはなんでだろう?
 頭をぐるぐると回して考えてみると、答えは案外簡単に出た。

 そういえば、ちさめに俺が避妊魔法を掛けていることを伝えていなかった。
 エドのいにっきを使った相手は、誰もが俺との間に子供が出来ても構わない、と考えているので気づかなかったが。
 そうか、ちさめは子供が出来ることを危惧していたわけだな。

 そう考えると、色々なことがわかってきた。
 俺がちさめのエロ写真を持っていたのに、ちさめが逃げようとしたのも、逃亡に失敗して、その償いとしてフェラをするとか寝ぼけたことを言ってきたのも、 中だしされすぎて流石にヤバイと思ったからだったのか。

 となると、お仕置きの方法は一つだな。

「なんだ、お前、危険日近くなのか?」
「そう、そうだから……頼む、口でも胸でも……するからっ……」
「そうだったのか。そんだったら、先に言えよ。
 俺だって子供なんていらないんだからよ」

 ちさめは恐る恐ると俺を見た。
 期待したいんだろうけど、俺を信じ切れないって感じだ。

「ったく、それが嫌で逃げようとしたんなら、ちさめはどうしようもないアホだな。
 もし、俺が気づかずに、子供が出来てたらどうすんだよ」
「う、うるせー……お、お前に言ったら、『じゃあ、俺の子供を産めよ』とか言うかと思ったんだよっ!」

 ま、もちろん言っていただろうな。
 避妊魔法を掛けているから、本当に妊娠することはないけど、ちさめがびびりながら俺の下で藻掻く姿を見るのは楽しそうだ。

 ちさめはあからさまにほっとした様子で、俺の腕の中での動きを鈍らせた。
 俺がちさめの胸をいじると、細かく熱い吐息を吐いている。

 ちさめはとても具合のいい女だった。
 のどかやゆえは少し発育不足が否めないし、このかは二人よりかはマシだが、まだまだだ。
 せつなは……まあ、あれはあれで成長が止まっているような気がする。
 高音は……悪くはないが、ちょっとおつむの方のコントロールがエドのいにっき使っても難しいし。
 ……あとは、言うまでもないやつが一人か。

 もちろん、他の俺の女が悪いって言っているわけじゃない。
 みんなそれぞれ個性があって、このかは何にしろ一生懸命でいとおしさがあるし、
 ゆえは基本下手くそだけど、それをダシにしていじめてやるといい声で泣く。
 せつなとこのかは、その時々によって代わるシチュエーションを味わえるし、
 高音はその体の良さと、自分の妹分の調教記録などという面白いことを語ってくれる。
 残ったあいつは……まあ、事後に確実に罪悪感を抱くものの、締め付けに関しては痛くなるほど強い。

 そんな女達の中でも、ちさめと俺は体の相性がばっちりだった。
 打てば響くように、突けば締める。
 それがとても具合がよくて、ついつい中出しばかりしてしまう。
 顔射とか、犬用の餌入れに入れて舐めさせたりとか、他にも有用なのだから中だしばかりに偏重するのはよくないと思うのだが。

 

 腕の中のちさめはゆっくりと緊張をほぐしてきた。
 俺にとって具合がいいってことは、ちさめにとっても具合がいいってことだ。
 なんだかんだ言って、普通にやっているときは、ちさめは体に素直になっている。
 普段は跳ねっ返り娘なのに、夜には甘えん坊なところがある、というのは中々いいもんだ。
 今まではエドのいにっきを使っていたから、みんな歪な性格になっているので、これはこれで味わえないものだ。

「あっ、おいっ! は、入ってる、入ってるぞ!」

 ぬるりぬるりと一物をちさめの秘裂にこすりつけて、そこから分泌されたおなじみの液にまぶす。
 十分に粘液が行き渡ったら、先端を口に当てて、つぷし、と刺した。
 亀頭が半分ほどで止める。

 途端に腕の中にいたちさめが動き出した。
 半分寝ているかのような、猫のような声と甘い息が口から出ていたのに、まるで浅い夢から覚めたかのようにびくっと震えた。

「す、素股でも、妊娠する可能性はゼロじゃないんだぞ。
 ましてや、中出ししないから大丈夫、なんてことを言い出すんじゃないだろうな」

 いつもは大抵素直になってくれるちさめも、妊娠の危険性が頭にあると違うらしい。
 流石にネットをいじっているだけあって、色々と性についてのことは知っている。
 ただ、それを実践したことはなく、処女の耳年増ってだけだった。
 様々な責め具を見せただけで、顔が青くなるのは見ていて楽しかった。

 避妊についてもばっちり知っていて、更に中出ししないから大丈夫、なんていう甘い言葉に騙されない程度の見識と理性はまだ残っているようだった。

「んにゃ、そんなことは言わんよ」

 そういいながら、ぐっと腰を押しつけた。
 先端が入っていたおかげで、狙いは大きくはずれることなく、ずぶりと柔らかい肉の中に分け入った。

「馬鹿ッ! 入ってる、入ってるって! 言ってることとやってることが全く違うじゃねーかっ!」
「ああ、うん、確かに」

 ちさめの体に、また抵抗の力が入ってきた。
 上からのしかかってきている俺の体を、なんとか引きはがそうと腕に力を入れて押してくる。
 ただ、所詮一般人程度の力……俺が特に力を込めずとも、俺の体重を支えることすら出来なやしない。

「やめっ、やめろって、ふざけるのは!」

 腕が駄目なら口でなんとかしようとしてきた。
 が、剣はペンよりも強い。
 ちさめの腰の裏に手を通すと、ひょいと持ち上げる。
 そのまま腰を掴んで、ぐいぐいと引き寄せる。

 所謂対面座位、という体位を取った。

「や、やめっ……んっ……あっ……だ、駄目だって、言ってる……ふぁっ……だろうがッ……」

 ここまで来てしまえば、もはやちさめの意思なんて関係ない。
 掴んだ腰を上下に持ち上げたり下げたり、逆に俺が腰を突き上げたり下げたりするだけでいい。

「んあっ……や、そこ……駄目だって、前にも言ったろ……」
「そこ、ってのは、ここのことか? ああ、そういえば、前も駄目だって言ってたな。
 でも、俺は『ああ、そうなのか、じゃあ、やめてやるよ』なんて一言も言ってなかったが?」

 ちさめの弱い部位を見つける。
 ちさめを落とすような感じで、ぐりぐりと亀頭の先端でこすってやると、ちさめは簡単に鳴き始める。
 最初の方こそ、「抜け」などと言っていたが、次第に喘ぎ声や、今のようないつもの『お願い』の方が多くなっていく。

 体から力が抜け、俺の体に向けて立てていた腕もへにょりと折れた。
 俺の胸の中にぐったりと飛び込んできて、両方の腕は緩く俺の首に巻き付けられている。

 ちさめの畑に至ってはもう、耕かされきっている。
 抵抗の気持ちなんてのはとっくに砂糖菓子のように溶けてしまい、ちさめを持ち上げる腕を止めると、まるで予定調和のように自分の足を俺の腰に絡めてき た。
 そこからは別に急ぐ必要はなく、ちさめにも少し自分で決定させる権利を与えてやる。

 ガンガン突き上げる、というよりも、ゆっくりゆっくりちさめとまぐあう。
 カタツムリのようなゆるやかさでお互いに動いていく。
 ちさめが俺の首を、ぐっと噛んできた。
 それなりに強い力だが、耐えられない程度の痛みではない。

「んっ……」

 ちさめは黙りこくってしまった。
 俺も何も言うことがないので、口を開かない。
 時折聞こえる外の喧噪を除けば、俺とちさめの息の音しか聞こえなかった。

 窓を閉め切っている上に、いささか湿度の高いの地域では、動いているとそれなりに汗が出る。
 俺もちさめも例外ではなく、全身に汗をかいていた。
 素肌を互いに密着させているせいで、汗すらも混じり合い、どっちがどっちの汗なのかわからないくらいになっていた。

 汗の酸っぱい臭いも、どことなく興奮させる。
 興奮するっていっても、動きを速めたり、気分を急激に高ぶらせるわけではなく、なんだか静かにいきり立つような感じだった。

「……そろそろ、出すぞ」

 ちさめの膣が俺のものをくわえ込み、先端をこんこんと突くたびにきゅっと締め付ける快感は、そろそろ限界に近づいていた。
 さっきまであんなに嫌がっていたのに、今はちさめは何も言わない。
 俺の首を甘く噛んでいるせいでよくわからなかったが、微かに頷いているかのようにも見えた。

 まあ、いつも通りだ。

 

 なんだか締まらない……いや、ちさめの中はものすごく締まったが、展開としては別に派手なイベントが起きたわけではなく、最後まで到達する。
 もし、ゆえとかせつな相手だったら、この後発憤して、SM道具が入った箱をひっくり返していただろう。
 が、ちさめ相手だとなんだか、妙に満足してしまって困る。

 いや、別にちさめはいじめられない、というわけではない。
 いじめるときはいじめるが、いじめないときは別にいじめなくても満足できてしまうのだ。
 これがゆえやせつな……ギリギリでのどか相手だと、いじめないときでもいじめないと気が済まない。
 高音は別枠で、あれはいじめないときがそもそもないのだから、比較することはできない。

 

「おい、大丈夫か?」

 夢見心地で、目を開いたまま、ぽーっと意識を飛ばしてしまっているちさめの頬を張って起こす。
 ちさめは口元にこぼれた涎を吹きもせず、慌てて俺から離れた。

「あっ、こ、こんなに出しやがって……」

 微かに頬を紅くして……前から紅かったから解りづらいが、読心術師として培った人物眼を信じるなら、顔を紅くしていた……ちさめは自分で自分の秘裂をま さぐった。
 どろりと溢れた精液を、人差し指で恐る恐る触れ、中のものを掻き出そうとしている。

「そんなことしても意味ないぞ」
「わかってるよ。
 ……今更、出したところで避妊が出来るわけじゃねーけど、だからってやらないわけにはいかねーだろ」
「いや、そうじゃなくて」

 ベッドに座りつつ、壁にもたれかかって、避妊魔法が掛けてあることを言ってやった。
 すると、ちさめは涙目で俺のことをぽかぽかと殴ってきた。
 痛くも痒くもないので、適当にあしらっていたら、今度はすね始めた。
 俺に背を向け、壁に向かって何かぶつぶつ言っている。

 元潜入工作員の耳の良さをあなどっているせいか、小声での独り言はほとんど聞き取れた。
 『あのかわいげのないガキですら、殴ったら吹っ飛んだのにこいつはもっとかわいげがない』とか、そんなことばかりだ。

 もちろん、俺の方からちさめの機嫌を取ろうとは思わない。
 ちさめの機嫌を取らせるってことも、ちさめ自身にやらせるつもりだ。

「さて、今度は俺が好きにやるんじゃなくて、ちさめ自身が好きにやれ」
「……は?」
「俺はここで寝ているから、ちさめのやりたいことをやっていいって言ってるんだよ」

 ちさめは振り向いてこっちを馬鹿を見るかのような目で見ている。

「好きにしていい、ってことは何もしなくてもいいのか?
 ……お前、あたしがお前に自分から媚びると思ってるのか?」
「俺がどう思っていようが、そこは関係ないことだろ。
 重要なのはちさめが実際にどうするか、ってだけで」
「ケッ、馬鹿にしやがって」

 ちさめは俺に背を向けたまま、シーツにくるまった。
 本気で寝るつもりか、と思ったが、ちさめはちさめの方にあるランプのスイッチを切らなかった。

 宣言通り、俺は俺から動くことはなく、ちさめの方を見て言った。

「何してもいいって言ったけど、最初は必ずキスから初めてくれよ」

 ちさめは動かなかった。
 体をくるんでいるシーツが震えさえしない。

「この乙女ちっく野郎が」

 小声で……本当に蚊の鳴くような小さな声で、ちさめがそうつぶやいた。

「何、ちさめには負けるさ」

 そこからは俺は目をつぶった。
 しばらくは何も無かったが、大体五分くらいしてから、俺の唇に何か柔らかいものが触れた。

 

 

 

 明日は、ようやく連絡がついたので、茶々丸と合流する。
 茶々丸はネギとともに行動しているそうなので、ネギには気づかれないように抜け出してくるんだそうだ。
 これからはちょっとゴタゴタがあるので、ちさめは邪魔だ。
 情報を引き出して、適当に飼い慣らした後であればちさめをネギに戻してしまっても問題ない。
 電子精霊達は俺の支配下にあるし、ちさめ本人もいくつかの脅しをかけているので、ネギに言うこともないだろう。

 何も問題ない。
 事態は万事、俺のいい方向に進んでいる。
 このかやゆえ達が俺を裏切って、超が勝手にくたばっちまったときとは大違いにうまく行っている。

 強いて問題があるとすれば、茶々丸と合流してちさめと別れることを、ちさめにどう説明したもんか、ということだ。
 まあ、明日、バザーで何か適当なものを買ってやって、機嫌を取ってから言えばいいか。