ゆえ編 第4話

 ゆえの破瓜は問題なく終わった。
 赤ちゃんにおしっこをさせるようなポーズでのどかがゆえを持ちあげ、
 ベッドに寝ていた俺の上にすとんと落としたのだ。

 いやだいやだ、と抵抗していたが、ろくに体も動かせない状態じゃ大したことはできなかった。
 のどかとは違って、ちゃんと処女膜が裂けたり、体内に異物が入ってくる痛みを経験し、
 ゆえは少女から女への階段を登ったのだった。

「こっ、この鬼畜! 変態! のどかと私に何をしたですかっ!」

 ベッドの上で、ゆえは泣きながら俺を罵倒していた。
 組み伏せられていて、尚かつ現在進行形で犯されている状態で言われても、
 俺の気分が高まる以外には、何の効果もないのは言うまでもないだろう。

「頭の中を色々といじっただけだ。……キスするぞ」
「んっ……んんっ……」

 唇を合わせるだけでゆえはとろんととろけるような反応を見せた。
 ただ単にきついだけだった膣の締め付けは、熟成されたかのように力が抜けて、
 俺の肉棒に熱くからみつくように、柔らかくなる。

 キスの設定は割と面白かったので、再び設定し直したのだ。
 俺の唇がゆえの唇に触れるたびに、恋愛感情スイッチがオンになる。

 のどかには、恋愛感情スイッチをいれていなかったため、
 常時、俺に対する愛がだだ漏れになってしまった。
 のどかの役割的には、緊急事態以外ではそれで十分問題ないのだが、
 ゆえの場合、もっとじっくりねっとりいじるために、キスをスイッチに設定した。

 どんなに心と体で抵抗していても、キスをされるとたちまち恋する乙女気分になってしまう。
 その無力感を心に刻み込み、とことん嬲ってやる必要がある。

「ぷはあっっ! きっ、キスするなです」

 口ではそういいながらも、ゆえははふはふ言いながら俺にしがみつき、首筋にちゅっちゅと吸い付いてきた。
 唇を離したので、恋愛感情スイッチはオフになったのだが、余韻がまだまだ残っているのだろう。

 傍らで待機していたのどかがそっと自分のアーティファクトである
 いどのえにっきでゆえの心を覗き込み、そこに書かれた絵と文字を、ゆえから見えないように俺に見せてきた。

『あっ、あっ、き、キスやめちゃいやですっ! もっと、もっとキスしてほしいですっ!』

 デフォルメされたゆえが手で真っ赤になった顔を隠しながら、そんなことを言っている絵が描かれていた。
 もはやゆえに隠せる部位は精神的にも肉体的にも何もないのだ。

 この後、ゆえをいじめて嬲るスケジュール表には、
 俺の『エドのいにっき』とのどかの『いどのえにっき』のダブル攻撃による、
 ゆえの恥ずかしい過去朗読大会が開催される予定である。

 心を見透かされていることなんてつゆ知らず、ゆえは強気を装っていた。
 陶酔した目つきをしながらも、「力で押さえつけないと女性を抱けないんですか、この卑怯者」とか
 「体を自由にしても、心までは好きにはできないです」とか、そんなかわいいことを言ってくれている。

 その光景の一部は記憶水晶に記憶しておいて、後で完璧に心まで堕ちたときに
 じっくり再生して、そこでまた嬲ってやるつもりだ。

「そんなことを言っても、ここは喜んでいるみたいだけどなあ」

 ぐいぐいと腰を押しつけて、膣がきゅっきゅと締まっていることを囁いてやる。
 「あっ」とか「んっ」とか細かい喘ぎ声を押し殺そうとしているものの、ちょっと小突くだけですぐに漏れている。
 俺の言葉に心当たりがあるらしく、顔を赤く染めてそっぽを向き、「そ、そんなことないです」と言ったが、
 どうみてもそんなことありありです。

 首筋から鎖骨にかけて、吸い付いたり、軽く歯形をつける度に、ゆえはびくびくと体を震わせる。

「や、やめろ、ですぅ……」

 口ではそんなことを言っているが、下の口は喜びしか表現していない。
 ついでに、実にいい笑顔でのどかが見せてくるいどのえにっきも悦びしか表現していない。

「ふぁあああ……」

 段々目が遠くを見ているようになり、体の動きが鈍くなっていく。
 ずりゅずりゅと音を立てるゆえの秘裂の潤滑油も多くなってきて、
 そろそろ初接合での初めてのオルガスムがゆえを襲うようだ。

「いくときはちゃんと『イク』って言えよ」
「だ、誰が、こんな、乱暴にされて……んんっ……イクわけないです」

 目の前に存在する動かし難い真実を、安易な嘘をついて否定するゆえ。
 それならば、ということで、俺はゆえの体の下に手を入れ、起きあがると同時にゆえを引き上げる。

 ゆえが座っている俺の腰の上に乗る、という俗に言う対面座位という形を取る。

 俺はまるで恋人を抱くかのような優しげな手つきで、そっとゆえを抱きしめた。

「なら、優しくしてやるよ」
「やっ……やさしく、するな……です……」

 のどかが見せるいどのえにっきには、ゆえの戸惑いと焦燥と、
 わき上がる感情を否定する論理的な思考が書かれていた。
 曰く、吊り橋効果だの、不良が少し良いことをしただけでものすごく良いことをしているように見えるだけだの、
 そういったことが高速にスクロールしている。

 ふれあった肌ごしに聞こえるゆえの心音は、とっとっとっと、とかなり早い拍動をしている。

 ゆえはなんだかんだいって単純だ。
 愛が暴走して、ベッドの上では時折斜め上の行動を起こすのどかなんかより、遙かに御しやすい。
 手綱を手に持ち、拍車にちゃんと足さえかけていれば、暴れることなくうまく制御できる。

 耳から湯気が出そうなほど顔を真っ赤にさせているゆえに、とどめとばかりキスをする。

「んんっ! んんんんっ!」

 恐らく、わき上がる感情に思考能力が付いていかなかったのだろう。
 いどのえにっきが文字化けしてしまった。
 表示されるのは、愛欲やらなにやらが暴走して描かれる絵ばかりで、
 何一つ意味をなしそうなものは残っちゃいない。
 ただやたらハートマークがあふれかえっていることが強く印象に残る。

 ゆえの頭が固さは、平常時であれば強みになるんだろうけど、
 こういった思考能力を遙かに超える自体に陥ると、あっけなく崩壊してしまうらしい。
 思考に柔軟な人間であれば、ゆえのような堅固で筋の通った理論の構築ができないだろうが、
 思考能力以上のことでも、「考えない」ことをして、思考そのものを崩壊させるようなことが回避できる。

 ぐだぐだ言ったけれども、今重要なことは、
 今のゆえは、精神が粉々になって、柔らかい破片になった状態であるということだ。
 その上を蹂躙すれば、ガラスの破片の上を靴で歩くかのごとく、ぱきぱきという小気味よい音が聞こえてくるに違いない。

 くてっと体重を俺に預けているゆえの頭を軽く持ち上げる。
 果てて、半分意識を失っている状態だったので、さしたる抵抗もない。
 虚ろになっている目が、ぼうっと俺の顔を映し、わずかな光を取り戻していた。

「ほら、好き、っていってみな」

 頭は左手で支えたまま、右手でエドのいにっきを開く。
 統制を取り戻そうとする意識を、ぐちゃぐちゃにかき回してやる。

「ふっ……あっ……」

 ゆえはぼうっと虚空を見つめ、口を微かにもごもご動かして何かを言おうとしていた。
 最初は、あまり意味のなしていないうめき声ばかりだったが、段々と意味をなす言葉が混じっていく。

「す、好き……です……」

 ついには、俺の意図した通りの言葉がつぶやかれた。
 それと同時に、俺の一物が入ったままの膣がきゅんっとしまり、ゆえの体がびくんと震えた。
 俺の支えが必要だったとはいえ、今まで自分の体で体勢を維持していたゆえが、
 また再び俺の体に抱きつくような形で倒れてきた。

 俺に向かって「好き」と言うと、感じるような設定をしておいた。
 これはキスをしたときとは違い、純粋に悦楽だけわき上がるようなものだ。

 好き、好き、という台詞をいうごとに体が快楽に反応してしまうことに対して、
 ゆえが本当に俺のことが好き、ということを錯覚するようなことを期待して暗示を植え付けた。

「ほらほら、もっと好きって言ってみな」

 ゆえの動きは鈍くなったものの、その動きには本能が見えるものだった。

「好……き、好きっ!」

 びくびくと震えながら、俺の耳元で小さな声で何度も何度も好き、と言う。
 ただただ貪欲に快楽を得ようと、その言葉の意味することも知らずに。

 現段階の正気を半ば失っているゆえに、好き、といわれても嬉しくない。
 嬉しくはないが、この後、ゆえが正気を取り戻し、
 自分が何をしていたのかを思い出したとき、
 激しい自己嫌悪に襲われることであろうことを想像すると、もはや勃起ものの興奮を覚える。

「好き、といいながら動いてごらん。もっと気持ちよくなれるぞ」

 ゆえは幽鬼のごときぎこちなさで、体を揺さぶり始めた。

「はふっぅんっ!」

 俺の胸に手を当てて、ちょっと腰を浮かしただけで、ゆえは敏感に反応した。
 ゆえの一番奥まで入り込んでいたカリ首が、ゆえの柔らかい肉を、
 まるで鍬で畑を耕すかのごとく、刺激したのだ。

 驚いたゆえは、折角浮かした腰を、また落としてしまった。
 すると今度は、ゆえの体重の一部がかかったまま、
 どすんと子宮口を俺の一物の先端に押しつけてしまった。

 腰を中心として広がる大きな衝撃と甘い痺れに恍惚とした表情を浮かべた。

 ゆえはその刺激が大層気に入ったようで、
 甘美な余韻が抜けたあと、同じようなものを再び味わおうと、また腰を浮かそうとした。

「す、好きっ、春原さん、好き、で……すぅっ!」

 ゆえは俺の首に腕を回し、俺の肩に体重をかけて腰を動かす方向にシフトした。
 甘美な官能をもたらしてくれる俺に思うところがあるのか、
 それともはたまた、なんとなく口にしてみただけなのか、俺の名前が唐突に出てきた。

 別に、それが俺にとって極めて都合のいい理由から発せられたものなのか、といわれると、
 多分違うんだろうが、俺の予期しない行為に、純粋にちょっと嬉しかった。

 ゆえは段々と動きのスピードを早くし、口の動きもまた活発になっていった。
 あの理性的な文学少女の面影はもはや一片も残しておらず、
 ただただ獣欲を満たすためだけに思考能力を費やしているケダモノになっている。

 数十分前のゆえであれば、今のゆえになるなんて想像もできなかっただろう。
 俺の腰の上で、がむしゃらに腰を振り、こびるような発言を繰り返すだなんて。

「春原さんっ! も、もうっ……」
「そろそろ限界か?」

 ゆえが感極まった表情を浮かべたかと思うと、ぎゅっと抱きついてきた。

 ちょうどよかった。
 俺もそろそろ限界だったところだ。

 がん、とゆえの足がベッドの端に当たった音がしたかと思うと、
 下半身に生暖かいものが触れた。

 もはやおもらし程度ではうろたえない。
 流石におっきい方をされたらビビるだろうが、おしっこをひっかけられるくらいなんだっていうんだ。

「……ッッ!」

 ゆえはぐったりとしたまま、ぴくぴくと反応を示してはいるものの動かなくなった。
 がっちりしがみついていた手をほどき、ゆえを俺の体から引きはがす。

 意識を失ったゆえをそのまま、シーツの端におしっこがついたベッドの上に寝かす。
 まだぱっくりと開いている秘裂から、どろりと白い液体が溢れ、淫靡な姿をさらしている。

 俺はベッドから立ち上がると、ベッドの脇でさっきからもそもそ動いている影に目を向けた。
 床に座ったまま、下着を膝までずりさげて、指をスカートの中に入れて何かをやっている女は、
 俺の視線に気づくと、びくっと体を動かした。

 隅には、手帳サイズの本が三冊転がっており、そのうち一つは白紙、
 もう一つは
 「うぇっ、もういどのえにっきを複数起動できるようになったのかよ、
  その方法はまだ教えてないのに。エロの力って偉大だな」と書かれ、
 最後には、なんだかゆえとあと俺の名前が書かれている。

 ちょっと目を離した隙に、何をやっているんだか。

 「ちょっと目を離した隙に、何をやっているんだか」と書かれたいどのえにっき分冊を取り上げる。
 いつも心を覗く方をやっているからわからなかったが、覗かれているのは結構嫌な気分になるもんなんだな。
 心を読まれた人間が凄くビビるのを見て、なんでだろうと思っていたが……経験したらその気持ちがわかったような気がする。
 「経験したらその気持ちがわかったような気がする」と書かれたいどのえにっき分冊を閉じる。
 『送還』の魔法を唱えてやると、俺の手の上にあった本と、
 辺りに散らばっていた二冊がぽんと音を立て、一枚のカードに戻った。

 注釈をいれておくと、アーティファクトを出現させるのは一応召喚にカテゴリーされる魔法なので、
 簡単なアンサモンの魔法で簡単にカードに戻すことが出来る。
 とはいえ、普通にアンサモンの魔法を使おうとしても、対策が練られていないわけがない。
 普通の魔法使いなら素の状態で、そうでなくても魔力供給による魔法耐性で弾かれてしまう。

 閑話休題。

 床にぺたりと座り込んでいたのどかが、潤んだ目で俺を見上げてくる。
 吐く息は熱く、肌は情欲に染まりきっている。

「ちょっと手伝ってくれ。ご褒美をやるから」

 のどかは、今この場で押し倒してくれないことに不満の表情を浮かべながらも、
 「ご褒美」という単語につられて、しぶしぶ頷いた。

 腰に力が入らなさそうだったので、手を掴んで引っ張り起こす。
 その後、ずりさがっていた下着を、俺の手でわざわざ上に引き上げた。

 くちゅりと音を立て、粘液が下着の布地に触れるのを確認すると、
 のどかは、顔を真っ赤にして、俺を見ているのに気が付いた。
 ほんの少しだけ機嫌を直したのか、俺の腕にしがみつくように抱きついてくる。

「じゃ、まず、ゆえの体の敏感なところにこの媚薬クリームを塗りたくるのを手伝ってくれ」












 ひっかけられた小便を落とすためにシャワーを浴びてから、ゆえいじめの次のステップのための準備をした。
 ゆえに体中に媚薬クリームを入念に塗りつけて、拘束用の椅子に縛り付けた。

 これで暴れられる心配も、オナニーされる心配もなくなったので、簡単な覚醒の魔法を唱えた。

「ん……え? ……ここは?」

 意識を鈍くするクスリの効果も一片に吹っ飛んだため、ゆえの思考はクリアになっているだろう。
 今までは意識があまりはっきりしていなかった方がよかったが、今ははっきりしていた方がいい。

「目が覚めたか? 気分はどうだ?」
「……最悪です」

 状況が把握できたゆえは、冷たい目で俺を睨んできた。
 さっきまでの愛を紡いでいた、甘いまなざしを向けていたゆえもいいが、
 こういう風にきりっとしているゆえも同じくらい良い。

 今はまだ媚薬クリームの効果がでていないし、ほとんど正気といってもいい感じだ。
 このゆえがどんな感じで、自分自身を犯してくれ、と嘆願する様まで堕ちるのか、期待に胸が膨らむ。

 ゆえは自分の手足を揺すって、椅子の拘束から逃れようとした。
 が、ゆえもはなっから俺がすぐ解けるような拘束をするわけがない、と思っていたようで、
 抵抗する力も弱く、どことなく投げやりな感じがする。

「初めてなのに、結構ハードにやったからな。ゆえには少し休憩していてもらう」
「何を考えている……です?」

 ゆえが胡散臭そうな目つきで俺を見た。
 はずせとか、そういうことを言っても意味がないとわかっているようで、一言も言わない。
 ただ、俺に気づかれないようにこっそり辺りを観察している。
 隙あらばどうにかしてやろう、と考えているようだ。
 逃げたって、契約暗示が埋め込まれているのだから意味がないのに。

「特に何も考えていやしないよ。
 強いて言うなら世界がどうやったら平和になるかを常に考えてる」

 ふざけたことを言うと、ゆえが俺の顔に注目した。
 もちろん、好意的な感情は一切なく、殺意すらその視線には混じっている。

 心の中では罵詈雑言が猛り狂っているのだろうが、ゆえはただ睨むだけだ。
 大声を張り上げるようなことをしないのは、体力の消耗を防ぐためだろう。
 ゆえが俺のことをどう思っているのか、えにっきないしはいにっきを使っていないからわからないが、
 戦闘派よりも頭脳派だということはわかっているはずだ。
 安易な挑発は乗らない人間に向かって、感情だけで動くことはしないようだった。

 ゆえの行動は予想通りっちゃあ予想通りだったが、それはそれでつまらなかった。
 俺に向かって悪罵をぶちまける様を記憶水晶に保存して、後でいじめるのに使ってやろうと思っていたのだが……。

 まあ、いいか。
 この冷静さがいつまで続くのか見物だし。

「……」

 そんなこんなで、俺の後にシャワーを浴びていたのどかが体にバスタオルを巻いただけの姿で入ってきた。
 ゆえは、もうのどかが俺の手に落ちていることを知っているので、動揺はしない。
 ただ、少し悲しそうな表情を浮かべたが、それを俺に見られていることに気づくと、
 また再び俺をにらみつけてきた。

「のどかを、元に戻すです」
「それをして、俺に何のメリットがある?」
「魔法というすばらしい力があるのに、人の心を自分の好き勝手にもてあそぶことにしか使えないんですかっ!」

 と、思ったら、なんか少し激昂してきた。

 うわあ、やべえ、いどのえにっきで今のゆえの心の中を覗いてみたい。

 のどかにとってゆえの存在は、俺よりも遙か格下になっている。
 が、ゆえの方は、のどかに裏切られた形になっても尚、
 のどかは自分の身の安全よりも大切なものらしい。

 別に、ゆえにとっての友達を大切に思う気持ちを馬鹿にするわけじゃないが、
 ここまでから回っていると極めて滑稽だ。

 凄い面白そう……とはいえ、今、ゆえの目の前でいどのえにっきを開くのは得策じゃない。
 ゆえには警戒されるだろうし、思考がぶれるので純粋なものは抜き取れないだろう。

 あー、のどかに言って、部屋の外にでもいどのえにっきを置いたまま、
 ログ保存モードにさせとけばよかった。

 ちら、とのどかを見たら、のどかの方も俺と同じことを考えていたようで、
 ゆえから見えない角度で、自分のカードをどうしようかと手の中でもてあそんでいた。

 前々から思っていたが、のどかはどうやら極めて染まりやすい人間のようだ。
 知識はろくにあるのに経験が付随していない。
 道具を一杯持っているのに、それらを複合的に使って問題を解決する方法を知らないが故に、
 俺という存在が簡単なお手本を見せただけで、それが唯一の手段だと思いこんでしまうのだろう。
 同じ読心術師(俺は洗脳術師だけど)の共振もあるのかもしれない。

「こ、このっ、卑劣漢ッ! 死んでしまえですっ!」

 おっと、この行動がことごとく滑っているゆえを忘れていた。

「俺はただ単純にのどかの愛を手に入れようと思ってるだけだよ。
 『愛を知らぬものが、本当の強さを手に入れることは永遠にないだろう』って、誰かが言ってただろ?」

 ゆえがぶちぎれそうになっていた。今や理性はかろうじて薄皮一枚で繋がっているような状態だろう。

 一応、上から送られてきた報告書に頼り切りというわけではなく、ちゃんと自分でいくらかのリサーチしている。
 それが洗脳するときに全く使えなかったが、精神的にいじめてやるときには使える。

「……何が『愛』ですかっ、人の心を無理矢理操って、一方的な暴行を加えているだけじゃないですかっ!」
「あら? そっちに反応すんの? ゆえの大好きなおじいさんの台詞を引用したことを怒ると思ってたのに」

 ゆえの顔が真っ赤に染まりあがった。
 恥ずかしさが原因ではなくて、怒りによってもたらされた赤だ。

 そこからは対して意味のない悪口を、ゆえはどっとはき出した。
 最初はいくばくか秩序だっていたが、
 後半になるともはや支離滅裂の、ただただ汚いだけの言葉に成り下がっていった。
 こういったものはもう見慣れているので、楽しくともなんともない。

 ただ、じっくり記憶水晶にその姿を記憶することに成功した。
 一通り楽しんだ後は、黙らせる。

「こ、殺してやるです、絶対に殺してやるですっ!」
「はい、もういいよ、黙っててくれ」
「……ぅッ!!」

 未だに興奮冷めやらぬ状態のまま、鼻息荒く俺をにらみつけてくるゆえ。
 ただし、契約暗示によって規定された命令には逆らえず、悪口を止めた。
 椅子の拘束を解こうと、無我夢中で暴れているが、もちろん、そんなもので解けるようなやわな拘束はしていない。

 興奮状態に陥っている上に、がむしゃらに動いたので、媚薬クリームの周りもぐっと早くなっただろう。
 あまりちんたらしていたら、勝手に陥落してしまって楽しみが減ってしまう可能性がある。

「さて、のどか」

 のどかをそっと引き寄せる。
 のどかは抵抗せず、むしろ自分から体を俺に押しつけ、目をつぶって唇を合わせてきた。
 散々教え込んだおかげで、自分から舌を積極的に絡めてくる。
 けれどもまだ、キスの気持ちよさに慣れていないのか、抱きしめた腕の中で、時折びくびくと震えるのがいとおしい。

 キスをしたあと、体が離れ、のどかの体を隠していたバスタオルが音もなく落ちた。
 のどかは手で隠すこともせず、そのままベッドに座った。
 俺ものどかの前に立ち、上からそっとキスをする。

 のどかの手と俺の手を合わせ、指を絡ませて、そのままゆっくりと倒す。
 ゆえがあれほど怒っていたのが、一転、泣きそうな表情を浮かべていたのをちらりと見てから、
 そのまま少し慣れ親しんできたのどかの体をむさぼった。









 ベッドの端に座り、のどかを上下に揺さぶる。
 俺の上にのどかが乗るような体位を取り、尚かつのどかの足を大きく開かせているので、
 真っ正面にいるゆえにとっては嫌が応にも接合部を見せられることになる。

「ぁっ……はぁっ……春原さんっ、キス、キスしたいですっ!」

 のどかがキスをねだってくる、ということはそろそろイきそうだということだ。
 キスしてやろうか、と思ったら、この体位では中々難しい。
 のどかは一生懸命、自分の首を回して、俺とキスしようとしているが、
 無理な体勢のうえ、現在進行形で上下に動いているので、中々座標があわずに唇を合わせられない。

 俺も色々と挑戦しようとしてみたが、途中で諦めた。

「あぅぅ……きす、きすぅ……

 涙目でまだ頑張ろうとしているのどかのことはほっといて、のどかの脇からゆえの様子をうかがってみた。

 ガン見だった。
 未だに暗示で黙らせているため、何も言わず、ただただ俺とのどかの結合部を潤んだ瞳で見ていた。

 のどかのあそこは、既に何度も放った俺の精液と、のどか自身の愛液にまみれてぐちょぐちょだ。
 そこに俺の一物が突き刺さり、何度何度も往復している。

 匂い立つような淫臭と、粘りけのある水をゆっくりかき回した音と、
 その光景に、ゆえはまばたきするのも惜しいとばかりに見ている。

 言うまでもなく、ゆえを拘束している椅子は、座席が濡れそぼっている。

「や、やだぁ、キス、キスしたいっ〜、春原さん、キスぅ」

 キスしたいと言われてもちょっと無理だ。
 のどかが腰の動きを止めれば、ひょっとしたらキスできるかもしれないが、
 止める気はないらしい。

 がんがん、と動き続けているうちに、臨界点が近づいてきた。

「っぁっ! きす、きす、キスしてからじゃなきゃ……ッッッっ!」

 のどかの体がびくんと大きく震えた。
 同時に俺を優しく包んでいた膣は、急激に収縮し、これでもか、とばかりに締め付ける。

「くっ……俺も、そろそろ」

 衝撃に耐えきれず、俺も今日だけで何度目かの射精をする。
 どくどく、と敏感な部位が脈打ち、何ともいいがたい虚脱感に囚われる。



 のどかがくてっと頭を俺にもたれさせかけた。
 また気をやってしまったらしい。
 魔法薬のサポートもなければ、自分自身で魔力をコントロールできない人間であれば、こんなものなんだろう。

 ぐったりとしたのどかを持ち上げる。
 すぽっと抜け、秘裂からは先ほどはなった精液と、せき止められていた愛液がどっとあふれ出てきた。
 ぱたぱた、と二種類の混合液は床に落ち、新たな染みを作る。

 そのままのどかをベッドに横たわらせると、ゆえに目を向けた。

 ゆえは俺の股間を凝視し、物欲しげに瞳を潤ませている。
 ぱちっと指を鳴らすと、俺が見ているコトに気づいたのか、視線を上に上げた。
 媚薬クリームの効果はてきめんだったらしい。

 さっきまで親の仇のような視線を向けてきたというのに、今や盛った雌犬のように俺にこびている。
 つっこんでやる、と言えば、どんな恥辱的な行為でも平然とやりそうだった。

 が、この程度で解放してやるなんてことはもちろんない。

 テーブルの上に置かれていた、記憶水晶に魔力を注ぎ込む。
 部屋の中心に、数十分前のゆえの立体映像が浮かび上がった。
 そのゆえは、俺に向かって「例え体の自由を奪ったとしても、真の心は奪えるわけがないです」とか、
 そんなことを延々と怒鳴っていた。

 今のゆえは泣きそうな目で、立体映像と俺とを何度も何度も往復させていた。

『絶対にッ! 絶対に私は私の意思を持っている限り、あなたの言うことには従いませんっ!』

 立体映像のゆえがこの台詞をつぶやくと、ぷつんと消えた。
 本物のゆえの方は、顔をうつむかせ、ぼろぼろと泣いていた。

 今の堕ちきってしまった自分に対する情けなさなのか、
 それとも、俺がゆえのことをまだ抱く気がないということを悟ってしまった悲しさなのか、
 どっちが理由で泣いているのかわからないが、俺に取っちゃしったことじゃない。

 ベッドの上で横たわっているのどかに再び手を伸ばす。
 胸を愛撫しようかと思ったが、ふと思い立って、今回はキスから初めることにした。