このか編 第2話

「やめてやめてやめてやめて、たす、たすたす、たすけて!」

 引き続き、というか、相も変わらず、というか、とにかく俺はこのかを犯し続けていた。
 ベッドの上に仰向けに寝かせた後、足を大きく開かせて、そのまま覆い被さるような正常位でだ。
 このかは半ば壊れ気味だった。
 シーツを逆手で握りしめ、若干虚ろな瞳で俺を見ながら、かすれた声で助けを求めている。

 うーん、少しやりすぎたか。
 思えばずーっとやりっぱなしだった。
 刹那にヤられたプレイ内容を報告させるため、うんと濃いことばっかりノンストップでやった。
 何十時間も耐久で合体して、俺が疲れたら、今度はゆえやのどかに道具を使って、このかを責めさせていたし。

 ちょっとおかしくなるのはこれが初めてじゃない。
 ただ、今回は結構深くおかしくなってしまったようだ。

「お、お願いや。も、もうやめて……」

 このかが切なげに声を漏らしながら、また懇願してきた。
 正直なところ、俺もいくばくか同情心が沸き、少しだけ休ませようと思っていた。
 思っていた……が、こんな風に『頼まれ』たら、その通りにしてやらなきゃいかんだろう。

 ということで。
 今までは浅く細かく突いていただけのを、ずんっ、と奥底にたたき込んだ。

「ぁッ! ぁぁぁぁッ!!」

 このかの視線が一瞬定まらなくなった。
 まるで宙に浮かんでいる何かを見つめているかのように、細かく左右にぶれる。

 同時に襲い来る激しい締め付け。
 何度も何度も突き立てられ、精液の味を教え込まれた子宮口がきゅとすぼまり、
 膣全体が、貫かれている肉の槍をぎゅううと絞るかのように締め付けてくる。

「んっ、ふぅぅぅっ」

 よだれがとめどなく溢れてきた口を塞いだ。
 とろとろとした唾液をすすり、舌をこのかの口の中に押し込む。
 このかは非常に消極的で、俺の舌が口の中に入った後も、びくりと反応したらそれっきりだった。

 舌を抜くと、このかの生暖かい息が俺の頬を撫でた。
 そっと身を引くと、このかは虚ろな瞳で何かを見つめていた。
 いや、ひょっとしたら何も見ていなかったのかもしれない。

 じゅぽん、という音を立てて、このかの中から俺の一部が抜けた。
 湯気が立ちそうなほど熱い液体にまみれ、未だ元気いっぱいだ。
 というか、若干収まりのつかない状態になっている。
 このまま一発……とやりたいものだが、そろそろこのかが限界っぽい。
 これ以上進行させても、問題はないが面倒だ。

「ふぅ……」

 このかの頬を優しく撫でる。
 反応は著しく鈍い。
 虚ろになった瞳は宙に浮きっぱなしだ。
 元々頑丈とは言い難い精神だった上、
 精神の消耗するペースをエドのいにっきで水増ししている。
 人の精神ってのは案外頑丈だが、壊れる速度を触媒してやれば、崩壊寸前までは数時間で事足りる。

 一回息を深く吸ってから、ベッドのふちに座り、手を伸ばしてカードを取る。
 アデアットと呟き、エドのいにっきを呼び出して、開いた。

 ちら、と、このかの様子をうかがってから、このかの精神の修復を試みる。

 煩雑になった精神の破片に糸を通して引き寄せるように修復する。
 作業自体はものの数秒で終わった。
 何度も何度も繰り返してやっているので、慣れたもんだ。

 もう一度振り返って見てみると、このかの瞳に生気が戻っていた。
 けれど、プラスの方向の気分にはなっていない。
 まあ、当たり前の話だが。

「も、もう……かんにんして……」

 さっきまでは涸れているように見えた涙が、またとめどもなく溢れてきた。
 同じ光景を、何度見ただろうか。
 このかは俺の手の中にあるエドのいにっきを見て、おののいている。
 このアーティファクトが、彼女に幾度となく絶望を味合わせていることを既に学習しているからだ。

「どうだ? フレッシュな気分になれただろう?」

 簡単に言えば、刹那に拷問を受けた際のトラウマを治療したときと同じだ。
 ただ、刹那のときと違うのは、治療した後も同じ目に遭うということだ。
 どんなに酷いことをやったとしても、どうしても本人はその行為に慣れてしまう。
 だから、エドのいにっきで新鮮な気分になってもらって、陵辱を受けて貰っているわけだ。

 ざくざくざくと皮膚をナイフで切り裂いて、
 治癒魔法で傷を治し、また新鮮な皮膚をナイフで切り裂くような行為だ。
 やられている方はたまったものじゃないだろう。

 傷というものはずっと残り続ける。
 新たな肉が傷痕を埋めても、傷はそこに残り続ける。
 精神においても同じことが言える。
 今は痛みを感じなくとも、心の負った傷は一生消えることはない。

「酷い……なんで、なんでこんなことが出来るんや」

 このかは手で顔を隠しながら泣いた。
 なんでこんなことが出来るのか、と問われても出来るから出来るとしか言いようがない。
 まあ、その辺の感覚は一般人と違うのかなー、と思ったりする。
 どうでもいいことだけど。

「それは、お前を愛しているからだよ」

 これは前もって決めておいた台詞だ。
 精神をぼろぼろにし、修復する、というループから抜け出するつもりだ。

「な、何、言ってるんや」
「いやいや、割と俺は本気で言っているぞ。
 才気に溢れ、美少女と言っても遜色のない容姿、穏和な性格と言い、全てが俺の好みだ」
「じゃ、じゃあ、なんでウチに酷いことを?」
「お前に酷いことをしているのは、お前が嫌いだからじゃなくて、好きだからなんだよ」

 そっとベッドの上を移動し、このかの近くに寄ると、両手でこのかの顔を捕まえた。
 頬の裏側あたりに指を入れ、こちらを向くように固定してから、
 じっと目を見つめたまま、優しい声色で語りかける。

「仕事、ってのもあるけど、俺はお前のことを手に入れたいと思ったんだよ。
 刹那に酷いことをしているのも、お前の心が刹那に向いているからなんだ」

 別に全くそういう気がなかったというわけではないが、自分で言っていて吹き出しそうになった。
 なんとか表情を取り繕ったが。
 ただ、このかはそんなことに気づいている様子はなかった。

「……そんな……」

 驚いた表情を浮かべ、俺を見ていた。
 ちょっとかわいいな、と思って、手を伸ばす。
 耳の裏側に指を這わせ、髪を耳の裏側に引っかけて、よく顔が見えるようにする。

「だから、このかが心の底から俺を愛してくれるというのなら、刹那に対する虐待はやめるよ。
 このかのことも、まあ、全く抱かないってわけじゃないけど、優しくしてあげる」

 今のこのかは正気を取り戻している。
 俺から与えられる陵辱に恐怖はするが、刹那と天秤をかけると膠着状態になる程度だ。
 まあ、このかが思った以上に、自分の痴態を見て、息を荒くしてオナニーにふける刹那に、
 心底幻滅していなければ、のことだが、それはないだろうと思っている。

「でも……ウチは……」

 このかは目線をそらした。
 考えるように眉を顰め、今にも泣きそうだ。

 自分の恋心なんかと、刹那を天秤にかけている。
 もう一押しってところだろう。

「俺を受け入れてくれたら、刹那を生かして帰すよ。
 本当は、処分しろ、って言われているけど、記憶を消したら、解放してあげる。
 何なら上の連中と掛け合ったっていいよ」
「……!!」

 前々は、刹那の命の保証だけはする、といっておとなしくさせていた。
 殺すと言ったら、このかが過剰に抵抗する可能性があるからだ。
 別に殺す気もないしな。

 ただ、駆け引きに使える場面になったら、殺す、なんてのは軽く言える。

「そんなッ、せっちゃんを、殺す……?」
「そうだよ。どうする? このか。
 俺はこのかを無理矢理手込めにすることが出来るけど、
 悲しむこのかはあまり見たくないからな……『友人』の命を救ってやってもいいぞ」

 そういうと、俺は顔を近づけて、キスをした。
 唇を割って舌を押し込み、口の中を味わう。

 このかは、さっきよりも遙かに強い反応を示した。
 口の中全体がびくびくと震え、舌でどこかをなぞるたびにに、頭を引いて逃げようとする。
 もちろん、頭をがっちり固定しているから、逃げられるわけがなく、微かに頭を前後に動かすだけにとどまっている。

「で、どうする?」

 そのまま押し倒すような格好になったこのかに問いかける。
 もう詰んでいるっていっても過言じゃないだろう。

 まさかこのかが俺の言っていることを百パーセント信じているとは俺でも思っちゃいないが、
 この提案に乗ってこないはずがないだろう。
 乗ってこなかったらこなかったで、また何度か繰り返せばいいし。

 このかは目に涙を溜めながら、わずかに首を上下に振った。

「よし。よしよしよし、いい子だなあ、このかは。
 何、すぐ、刹那のことは忘れさせてやるよ」
「……せ、せっちゃんのことは、もう、言わんといて……」
「いやいや、これからこのかには刹那に対しての好意を捨てて貰わないと困るからな」

 エドのいにっきの暗示がここで一つ披露される。

「といっても、すぐに忘れるってわけにはいかないだろう。 
 だから、ちょっとだけ手伝おうと思っている。
 なあに、実に簡単だし、手間のかかることでもない」
「……」

 体を引き、つつ、と指をこのかの肌に這わせる。
 人差し指が脇の下から蛇行しながら、下腹部に触れる。
 臍の下を、とんとんと軽くノックして言う。

「イくとき、刹那の悪口を言うんだ」
「せっちゃんの、わる……くち?」
「そう、刹那の馬鹿でもアホでもいい。
 ただ、同じ悪口は二回まで……色んな悪口を考えて、イくときに言うんだ。
 そうすることで、このかの中の刹那を思う気持ちは、ゆっくり消えていく」

 もちろん、この悪口はきっちり録音させてもらう。
 後々、刹那に聞かせようか、と思っているが、聞かせる機会がなかったとしても、
 なかなかの見物なので、取っておく価値はある。

 いきりたった一物を、このかの体に押しつける。
 熱をもったそれに触れることで、このかは体をよじる。

「二回までは、見てみないふりをしてやる。
 でも、三回、イったのに何も言わなかったら、刹那を殺す。
 刹那を殺して、その臓物を無理矢理食わせてやる」
「……ッッ!!」

 体を硬直させるこのか。
 脅し過ぎのような気もするが、今はこれでいい、と思う。
 ゆっくりと底なし沼に追い込むのは恐怖でもいいんだ。

「じゃ、行くぞ」

 うってかわって優しい声色で、このかに囁く。
 そして、挿入に至るプロセスを開始する。

 さっきまで犯し尽くしていたので、前戯する必要はない。
 一物を握り、そっとこのかの入り口に添える。

 またこのかがぼろぼろ泣き出したのを目で楽しみながら、一気に突き刺した。

「……んッ……くぅぅッ……」

 結構な衝撃があったろうに、このかは下唇をかみしめてこらえていた。
 痛みを感じているわけじゃない、むしろ逆で気持ちよいのを我慢しているのだろう。



 腰を引くと、このかの腰も引っ張られてきた。
 無意識でそうなっているわけじゃなくて、カリで膣壁を擦られる快楽から逃れるために、
 意識的に腰を動かしているのだろう。

「ぐッッ……ふ、ふかっ……ふかいぃぃぃぃ!」

 ただし、今のこのかと俺は以心伝心とはほど遠い。
 俺が引く腰を止め、また突き出すタイミングがこのかに解るわけもなく、
 むしろ俺は嬉々として腰を突き出した。

「や、やぁああっ、は、はなし、はなしてっ!」

 ごりごり、と先端がこのかの一番深いところをえぐる。
 このかは俺の癖を見抜くほどの余裕はないだろうが、俺の方は既にこのかの弱点を知り尽くしている。

 ボルチオ性感帯を固いものでぐりぐりとこねくり回し、このかに悲鳴混じりの嬌声を上げさせる。
 腰の裏に手を延ばし、がっちり固定したまま、そのまま左右に揺さぶって、子宮口付近をねっとりと刺激する。

「だ、だめぇッ! こ、このまま、このままされたらッ、ウチは、ウチはぁぁッ!」

 このかが本格的に暴れ始めた。
 手で俺の肩を本気で押して、引きはがそうとしてくる。
 けど、所詮は女の子の腕力。
 俺の体にはびくともしない。

 せいぜい、反作用を受けてこのかの体が左右に揺れたくらいだが、
 このかを掴んでいる俺の手はびくともしない。
 むしろ、反動を受けて、より強く刺激を受けて、自爆している。

「あっ、やッ! やあああッ!」

 ふにゃあっとこのかの手足から力が抜ける。
 こうなるのは、イくのがもうすぐってことだ。

 このかを軽く持ち上げていた手をそっと離す。
 カリがこのかの膣壁をがりがりとこそげ落とすように動く。
 膣全体がびくびくと震え、蹂躙されていることに歓喜の反応を示す。

「ほら、このか、刹那の悪口を言え」

 抜きかけたなら、再び入れるのが筋ってもんだろう。
 このかの膣から、カリの傘が見えるほど引き抜いた後、また、ためらわず腰を押しつけた。
 ずん、とまた再びこのかの奥を鈴口に感じる。

「やぁッ! ら、らめっ! そんなに奥をずんずんされたらぁっ!!」
「ほらほら、タイミングを合わせないと先にイっちまうぞ」
「ひっぐぅ……せ、せっちゃんの、せっちゃんのばかぁあああっ!」

 このかの、馬鹿、という声が響くと同時に、膣の締め付けが強烈になった。
 ぎゅぎゅうと、絞られるかのような感覚に呑み込まれそうになったが、なんとか耐えた。

「よく言えたな、このか」

 繋がったまま、このかの額に浮かぶ汗を手で拭ってやる。
 このかは嬉しそうな表情を浮かべていない。
 とはいえ、まだまだ始まったばかりだからしょうがない。

 これから何度も何度もせつなの悪口を言わせて、俺の虜にしてやらないと。

「続き、するぞ」
「ま、まら、イったばかりだから、もうちょっと休ませてや……」
「何言ってるんだ。さっきは抜かずに何回もやっただろう」







 このかが俺の腰の上にのり、激しく上下している。
 もう何度、このかは刹那の悪口を叫んだのだろうか。
 ぼんやりとした目で、よだれを垂らし、一心不乱に腰を振っている姿を見ていると、
 十数回程度だったかなあ、とぼんやりと思い出す。

 このかは俺の手と手を合わせ、突き立てることでついたてのようにバランスを取っている。

「はぁっ、いいっ! 気持ちええよぉっ!」

 少しずつ刹那への恋心を削っていったこのかは、簡単に落ちた。
 激しい性交で意識が朦朧とした、前後不覚状態の耳元で愛を囁いてやったのも、
 エドのいにっきの暗示に加えて更に強い効果を出したのだろう。

「ああ、俺も気持ちいいぞ」

 このかの膣は、ぴったりと俺に吸い付き、まるで俺専用のためのような案配になってきている。
 精神が肉体に作用した、なんて陳腐なことは考えないが、無理矢理やっていたときよりも確かに感触が違ってきている。

「は、春原さんの、お、おちんちんがお腹をこつん、って突くたびに、
 頭が、真っ白になって……んっ!」

 ぐちゃぐちゃと粘液が攪拌される音が響く。
 このかは夢中になって腰を振り、時折一番深く腰を下ろした後、左右に振って、
 子宮口付近をごりごりとされる感覚を楽しんでいる。

「刹那なんかが好きだったのが損に思えてきただろ」
「は、はい……春原はんの言うとおりやった……。
 気持ちええ、春原はんのおちんちん、気持ちええよぅ」

 熱に浮かされたような真っ赤な顔で、隠語を平然と口にするこのか。

 白い肌がピンク色に染まり、長い髪がこしょこしょと俺の足をくすぐる。
 前々からかわいいと思っていたが、思った以上にかわいいことがわかった。

 俺に恋心が芽生えた後は、ころんと快楽に素直になったのだ。
 もちろん、前々にやっていた行為なんかが性行為に対する抵抗感を失わせていたのだろうが、
 ここまで素直にすとんと行ってくれたのは、中々楽しい。

「何せ刹那のじゃ、この気持ちいいのは味わえないからなあ」

 そういいながら、腰をぐいぐいとこのかの中に押しつけた。
 そのたびに、このかは甘いため息をはき出す。

「そうやぁ……この、気持ちええのは、せっちゃんのじゃ、短すぎっ……やからなぁ……」

 どうやら子宮口付近を責められることに、このかは嵌ってしまったらしい。
 ぐりぐりと自分から動くときは、重点的にそこに触れるようにしてくる。

 かわいさを感じつつも、このかを哀れむ気持ちもあった。
 ここの気持ちよさに慣れてしまったら、自分でオナニーするときは大変だろうに、と。

 ……こっそり後で、このかはオナニー時にバイブの使用禁止しておこう。
 そうすれば、普通のオナニーじゃ満足できないこのかがすぐに抱きついてくるって寸法だ。
 まあ、バイブ禁止にしても、このかはバイブなんて持っていないだろうけど。

「ん? 刹那のじゃ短すぎるって、試したことあるのか?」
「そ、そんなことあらへんッ! う、ウチは、春原はんのものやからっ。
 せっちゃんなんかと、するわけ……」
「でも、刹那はお前の恋人だったんだろ」
「……」

 このかはいきなりしなだれかかってきた。
 俺から見ると、いきなりこのかの顔が落ちてくるように見えたので、
 少しびっくりしたが、このかは俺の唇を奪っただけで、ヘッドバッドはしてこなかった。

 このかの舌が俺の口の中に入り、何が楽しいのか……いや、俺が言えた義理じゃないか、
 俺の口の中をくまなく舐めてきた。
 まるで、俺の口の中にあるもの全てを取らないと気が済まないとばかりに、
 唾液も舌も何もかも吸い付くように吸い取っていく。

 もちろん、やられっぱなしでいるのも癪なので、俺も積極的に舌を絡ませる。
 体勢的にはこのかの方が上なので、このかは惜しげもなく唾液を俺の口の中に送り込んできた。
 俺もそれを拒絶するようなことはせず、口の中でくちゃくちゃと味わった後、
 ゆっくり、喉を鳴らして、このかの唾液を飲み干した。

「前の……前の話は言わんといて……あのときは、ウチが馬鹿やってん……」
「どう、馬鹿だったんだ?」
「ウチのこと、こんなに愛してくれる春原はんのことに気づかなかったことや。
 春原はんは、ウチによくしてくれとる……
 エッチのときは優しいし、お、おちんちんはすっごく気持ちええ。
 せっちゃんはそんなことない……というか、せっちゃんとエッチなことをするなんて考えることもできひん。
 それくらい、ウチは春原はんに染まってしもうたん」

 このかは、俺の首筋にちゅっちゅとキスを浴びせかけてくる。
 まるで、これは私のだ、とマーキングするかのような行為だった。
 このかに、自分の所持品宣言されるのは中々気分がよかったので、されるがままになる。
 手を伸ばし、このかの頭をそっと撫でる。
 髪にまで神経が通っているかのように、このかは過敏に反応を示す。

 一旦落ちてしまえば、ちょろいものだ。
 簡単なほどころりと心変わりし、今や俺にべた惚れ。

 まあ、刹那に対する恋心ってのは、そもそも俺がこのかに植え付けた即席の感情だったから、
 簡単に落ちてしまうのもしょうがないことだったのかもしれない。

「春原はん……ウチの中に、ちょうだぃ……」
「このかが頑張ってくれたら、すぐにあげるよ」
「ふっ、ぁっ……」

 このかは快感をむさぼるように腰を再び動かし始めた。
 ごりごりと膣に刺激を受けるだけでなく、
 何も教え込んでいないのに、このかは独自に創意工夫を凝らして、膣の締め付けをコントロールしている。
 まだまだ男心というものを把握出来ていないせいか、つたない技術しかないが、
 俺を喜ばそうとしてくる心構えがこの段階であるのならば、飛躍的な成長を期待できる。

「んっ……春原はん……ッ、うち、ウチもうだめやぁ」
「いいよ、先にイっても」
「い、いややぁっ……春原はんも……春原はんも一緒じゃないといややぁっ!」

 かわいいことを言ってくれる。
 これが、俺が命を捨ててこのかを逃がそうとするシチュエーションだったら感動物だったのだが、
 今の状況では感動物じゃなくて、官能物だ。親が見ていたら勘当物だったろうけど。

「気にするなよ、このか、俺はこのかが望むようなことをしてやりたいだけだからな」
「んっ……そんなっ……ウチはっ……」

 俺も腰を動かし始める。
 意図しない刺激を押さえ込もうと、このかは俺の体の動きを止めようとして手を俺の胸について体重をかける。

 なんだかもどかしくなって、俺はこのかを倒した。
 このかの片足の足首を掴み、ぐいと大きく持ち上げる。

「や、やぁっ、こないな格好……恥ずかしい」

 所謂松葉崩しという体位をとった。
 横に寝かせて、片足をベッドの上に、もう片方の足は持ち上げて、足を開かせる。
 このかの下腹部にある黒く濡れる薄い茂みがざわめき、秘裂がひめやかに開くのが見える。

「行くぞ」

 そういうのとほぼ同時に腰を押しつけた。
 体に浮かんだ汗の一部が動きに釣られてはじけ飛ぶ。

「ひゃっ! そ、そんな激しくされたらッ!」

 体勢が体勢なだけにこのかはろくに身動きが取れない。
 手元にあった枕をぐっと握りしめ、体に力を入れて、耐えようとしている。

 俺はこのかに刹那の悪口を言わせる以前のときの荒々しさを取り戻して、腰を振った。
 このかの体と俺の体がぶつかりあって、ぱんぱんという音が響く。

 ずりゅずりゅと音が鳴り、このかの秘裂から粘液がどっとあふれ出る。

「ら、らめぇっ、はっ、激しすぎたら、す、すぐいっちゃ……春原はんも一緒にぃっ」

 ごつごつと奥を突く。
 無茶苦茶やっているようで、狙いはちゃんと付けている。
 このかの特別弱い部位を、擦るように動いている。

「よし、中に出してやる」
「あっ、あっ……う、嬉しいわぁッ! うち、ウチ、春原はんの赤ちゃん……」

 赤ちゃん?
 ああ、そうか、まだこのかには俺が避妊魔法を使っていることを教えていなかったんだっけ。
 まあいいか、子供が出来るって言ってた方が面白いかもしれない。

「あっぁっ、で、でも、早くっ、ウチ、もう、限界やぁ〜っ!」

 飽くまで同時にイくことにこのかはこだわっているようだった。

「出すぞ、このかの中に、出すぞ」
「あっぁっあっ、来てぇっ、春原はん、来てぇっ!!」

 一際深いところで、弾けた、
 白濁液がどくどくと溢れ、このかの中に広がっていく。

 一瞬の虚脱感を気持ちよく感じたら、そっと体を離す。
 悪戯心が出てきたので、まだ息を切らせているこのかの足を大きく広げさせた。

「おっ、出てきた出てきた」

 一瞬の後、このかの秘裂から、透明な粘液に混じって白濁液がどろりとにじみ出てきた。
 逆流したそれを、このかは手で隠すように覆った。

「や、やぁっ……は、恥ずかしいっ」
「手をどけろよ、見えないじゃないか」
「み、見んといて……お願いや、春原はん」

 甘い声で囁かれたら、引くしかない。
 本当は、デジカメかなんかで撮影してやろうかと思っていたが……
 まあ、それは後でいくらでも出来るから、今はやめておこう。

「さて、そういえば、このか、さっきイったとき、刹那の悪口を言っていなかったな」
「え……あっ! ご、ごめんなさい」
「いや、もういいよ。このかが俺の物になったのは確かだしな。
 刹那を殺しもしないさ、さっき言ったのは嘘だったからな」
「よ、よかったぁ〜。でも、嘘やったんか、せっちゃんを殺さなあかんって」
「お前が欲しかったから嘘ついたんだよ。騙されてくやしい?」
「ううん。ウチも春原はんのものになれたことが嬉しいし……」

 俺はそっとこのかに口づけをした。
 激しくもなく、かといってついばむような軽いものでもない。
 肉体的な快楽というよりも、精神的なつながりを楽しむようなキスだった。

 口を離すと、そっと身を引いた。
 このかは悲しげに俺にしがみつこうとしたが、俺はベッドから立ち上がった。

「刹那のところに行くか」
「せっちゃんのところへ?」
「そうだよ、このかの元彼に挨拶にいかなきゃならないだろ?」

 久しぶりに服を着ることにしている。
 このかの分もちゃんと用意してある。
 まずはシャワーを浴びなきゃならないけど。

 挨拶に行くなら、きちんとした格好でいかなきゃならないからな。

「一緒にシャワー浴びよう、俺が洗ってあげるから」

 そういって、このかに手を差し出した。
 このかは控えめに、しかし、戸惑うことなく、俺の手を掴んだ。


 刹那が泣いて悔しがる姿が今から楽しみだ。