このか編 第3話

「ほら、どうだ刹那。お前のお嬢様の姿は」

 あの後、すぐにこのかを引き連れて刹那の部屋にやってきた。
 半分の部屋の外側に置いてあるソファーにどっかと座り、その足下に制服姿のこのかがいる。

 部屋に入ってきたときの刹那の表情は、どことなく期待がこめられたものだった。
 恋人であるこのかが自分の知らぬところで徹底的に犯されているという現実から逃れるためか、
 病的なほど自慰行為を行うようになったせいで、この告白タイムで新たなズリネタを得ようと必死なのだろう。

 思いっきりさげすむ目で無様な姿をさらす刹那を見下ろした後、
 いつもとは違った切り出し方をした。

 いつもと違うのは、切り出し方だけじゃなくて、このかの格好もそうだった。
 今までこの部屋にこのかを連れてくるのは常に全裸だったが、今日はちゃんと服を着ている。
 制服はいつもこのかが着ているものと同じだが、丈は短くしてある。
 ちょっと走ったり、跳ねたりすれば、下着がちらちらと見えるくらいだ。
 これは完全に俺の趣味であり、別に特別な意味があるわけではない。

「いつもはこのかに自分のやられたことを言わせていただけだろう?
 今回は、実際にやっているところを見せてやるよ」

 このかは俺の足と足の間に顔を突っ込み、口でファスナーをくわえるとじじじとおろした。
 ズボンの中のボクサーパンツの隙間を広げると、その奥にあるものを舌で引っ張り出す。

 このかは目の前にまろびでた一物を見て、熱い息を吐いた。
 愛しいものを見るかのような目で、じっくりとなめ回すように観察し、
 また再び熱いため息をつく。

「これが……ウチを駄目にしてまうものなんやな」

 もう何度も何度も見ているはずのそれを、まるで見るのは初めて、とでもいうかのようなことを言った。
 あながち、このかは本気で俺の一物に感動しているようで、ぶつかりそうなほど近くに顔を寄せ、
 表面に浮き出る血管の一本一本を暗記するような勢いでじっと見つめている。

 気恥ずかしい、というわけではないが、俺はこのかの視線を俺の一物以外のものに向けさせようと思った。
 今の状況は、このかは楽しいだろうが、俺は楽しくない。

「刹那のも見てやれよ、お前の『恋人』なんだろ」

 このかは嫌そうにしていたものの、俺の命令に従って、ゆっくりと振り向いた。
 このかの視線を向けられた刹那は、びくりと体を震わせる。

 刹那は自分の体を手で隠そうとはしない。
 もちろん、俺の命令によって、このかに視線を向けられたとき、体を隠すことが禁じられているからだ。

「どうだ? お前の『恋人』のものは。
 もし、俺が来なかったら、アレで処女を散らしてたんだぞ、どう思う?」
「すごく……小さいです……」

 このかもまたさげすむような目で刹那を見ていた。
 ちらちらと刹那のものを見た後、俺のものを見て、ほうと熱いため息を吐く。

 催眠で作り出した状況といえど、優越感が刺激されて悪い気分はしない。
 刹那が得も言えぬ表情を浮かべているのも心地よい。

「あないな小さいもので、ウチの処女膜破くつもりやったんかな、とちょっと腹が立ってます。
 ウチはやっぱり、春原はんのような、おっきなものでないと……」

 ぞわぞわとした感覚が走ったかと思って見てみたら、このかが俺の物を側面からゆっくり舌を這わせていた。
 ぬらぬらとした唾液が、光を反射してその存在を知らしめていた。

 このかは俺の一物を一舐めした後、舌先に残る味を舌全体に延ばそうとしているのか、
 舌を出して舌先をくるくる回している。
 舌を口の中に戻してからは、今度は口の中全体に味を回すためか、舌を口の中で動かしながら言った。

「それに……さっきからせっちゃんのこと、ウチの恋人ゆーてますけど、ウチはもう春原はんのモノや。
 んっ……はぁはぁ……だから、春原はんにそんな風に言われると、悲しくなるわー」

 このかは鈴口をぺろりと舐めて、にじみ出た透明の液体をすくい取ると、
 そのまま俺の一物をくわえ込んだ。
 悪戯な笑みを浮かべて、そっと歯を添えあてる。
 ふざけているというか、恋人同士のいちゃいちゃのようなちょっかいをかけてきた。

 俺はそんなこのかに苦笑を浮かべながら、綺麗な黒髪を撫でてやった。

「だってよ、刹那。
 お前があまりにふがいないから、このかは俺のものになったってさ」

 刹那は実に悔しそうな表情を浮かべていて、実にスカッとした気分になった。
 やっぱりこうでなくちゃ。

「んっ……じゅるっ……あああっ、おっきぃ……味も……んんっ……濃くて、すてきやぁ……」
「おう、このかも段々舌の動きがうまくなってきてるぞ」
「あり……じゅるるっ、ありがとうございまふ」

 まだまだ満点はあげられないものの、訓練時間の短ささから考えれば上出来といったところだろう。
 元来の優しさ、というか他人の気持ちを察しようとする努力が促進しているのかもしれない。
 このかは口に含んでいた一物を離すと、舌を出してカリ首周辺をぺろぺろと舐め始める。

 そんな淫靡な行為に没頭しているくせに、澄み切った目でこちらを真っ直ぐと見つめている。

「そろそろ……ウチ、我慢できひんようになってきた。春原はんのこと、もっと感じたいんや」

 予定だと、口で一発くらい抜くつもりだった。
 白濁液を顔にぶちまけて、その様子を刹那に見せつけるつもりだった。

 が、まあ、予定は飽くまで予定。
 不甲斐なくも、このかの予定外の頑張りっぷりに俺の中でも、
 このかを積極的に責め立てたいという感情がわき上がってきていた。

 誰に遠慮をするものなのか、とそっと手をこのかの顔に当てて、いいぞ、と短く答えた。







「ほら、スカートの裾を持ち上げて……ちゃんとあげないと刹那に見えないぞ」
「で、でも……恥ずかしい……」
「ふーん、このかは俺と繋がるのが恥ずかしいのか」
「そ、そうやない……ん、もう、わかっているんやろ、いけず」

 刹那にさらにずずいっと近づいた。
 俺はソファーに深く座り込み、このかはソファーの肘掛けに膝を立て、スカートを大きくめくってまたがろうとしている。

「ほら、刹那、もうそろそろ、お前が願ってやまなかった光景が見られるぞ」

 このかは下着をつけておらず、当然スカートをめくっているので刹那からも俺からも下半身を直接見ているような形にある。

「う……あ、あ……こ、このちゃんッ……」

 このかの股の間から見える刹那は、みっともない表情を浮かべながら、
 しきりに股間付近の空を右手で輪を作り、上下させていた。

「やれやれ、情けないな。愛する女が憎い敵に抱かれるというのに、お前は自慰行為しか出来ないのか」

 そんな風にしたのは俺だがな、と心の中でそっと付け足し。

「まあ、女一人ろくに守れなかった不甲斐ない護衛には相応しい姿か」
「……そうやなあ、せっちゃんのモノじゃ、どうせ女の子を喜ばせることもできんやろし……。
 そうやって一人でシコシコしているのが全ての女の子のためなのかもなぁ」

 思わぬこのかの追撃に、刹那は目を見開いた。
 どこにそんな水分を蓄えていたのかと思えるくらい、目から涙が溢れ、
 それでいて、手の動きが一層に激しくなっていた。

「このちゃんッ! このちゃん、このちゃん、このちゃんッ!!」

 喉をちぎるような高い声で、叫ぶように刹那はうめき始めた。

 ついに壊れたか、と一瞬焦ったが、よくよく考えれば後でまた修復してやればいいことに気づいた。
 どうせ壊れるのならもっともっと壊してしまおう。
 不意に梱包材のことを思い出した。
 あれのプチプチを一つ一つ潰して、最後は雑巾を絞るように一気に残ったのを潰すのが好きなんだよな。

「取り返そうという努力すらしないのか、救いがたい屑だな。
 ……ほら、このか、俺たちの愛のあるセックスをあの屑に見せつけてやろう」
「そうやなあ、せっちゃんに本物のエッチが、どんなにすばらしいことか、見せてあげんとなあ。
 あ、でも、せっちゃんにはやらせちゃあかんなあ。
 せっちゃんの小さいおちんちんでエッチされる女の子がかわいそうやから」

 このかはスカートを持ち上げたまま、腰をうまく動かして、立っている俺の一物に触れた。
 外気に接している柔らかい肉が、分泌した粘っこい液体をたらーっと垂らす。

 このかの息は細かく早く、顔は上気し、かつて味わった交合による快楽を今か今かと待ちわびているようだった。

 ずりゅううっ

「あ、あはっ! い、いきなり、奥までっ……挿って……あっ!」

 躊躇いのない動きで、このかは自分の中に俺を受け入れた。
 怒張の先端が膣の行き止まりに触れる。

「感じる……感じるえ……。
 春原はんがウチの奥にまで入ってきてくれている感覚が」

 このかがいとおしそうにお腹に手を当てて感触を味わっているのと同じように、
 俺も先端に触れるぷにぷにとした肉の感触を楽しんでいた。

 何度も何度も犯したといえども、まだまだこのかの膣は固さが残っている。
 体の小さいゆえほどではないが、完全にこなれるのには少し時間がかかりそうだ。

 目の前にあるこのかの長い髪を一束掴み、軽く引っ張った。
 このかの奥底から、じわりと熱い水が溢れてくるのを感じられる。

 痛みを感じさせるほど強く掴んだわけではないが、無遠慮に髪に触れられて興奮したのだろう。
 このかは、のどかやゆえとは違って、それほどM気は多くない。
 とはいえ、俺がやや乱暴に扱っているため、モノ扱いされることに性的興奮を感じるようになっている。
 ただ、どちらかというと、精神的つながりを重要視する傾向がある。

 のどかもそうだけれども、のどかはのどかで俺がエドのいにっきを使う様を見てから、
 少しずつその性癖が変容しているきらいがある。
 エドのいにっきで停止させなければ、必ず変化してしまうという確証はないが、頭の中に入れておく必要はある。

 話がそれたが、このかは無理矢理俺が犯すような力ずくなセックスよりも、
 両者同意のもとで行われる愛の営みの方が好きということだ。

 とはいえ、今の状況がきちんとした愛の営みであるとは言い難い。
 きっかけや動機はもちろん、エドのいにっきを使ったことも不純なものだ。
 そこに愛なんてものはない。

 では何故このかが、単なる肉体の反応以上に感度を高ぶらせているかというと、少なくともこのかがそう思いこんでいるからだろう。
 きっかけも動機も、俺がエドのいにっきを用いたことに関しても、全て愛のためとこのかは認識している。
 卵白が熱を受けて変質してしまったかのように、このかの思考は異常な経験を経てそのフレームを歪ませてしまった。

 本来ならば……と言っても、この舞台すらも俺が作り上げた茶番だが……刹那と行われるはずだったこの行為を、
 刹那の目の前で俺と行っているということに、背徳感を感じているはずだ。
 その素振りを全く見せてはいないものの、高ぶるためのスパイスとしてふんだんに利用していることだろう。
 いまや、このかが刹那を思う気持ちなんてひとかけらも残っていないが、記憶は消されていない。

 本来このかが持っていた『愛』というものと大きくかけ離れたこの行為を『愛』と認識し、
 その偽物の愛でもって悦楽……このかにとって正常な快楽を貪るためにだ。

 このかがそういう楽しみ方をしているのならば、それに答えてやるのが俺の役目だ。

 パァンと乾いた音が部屋に響いた。
 突然の物音に驚いたのか、刹那が一瞬手を止めた。
 が、それよりも驚いたのはこのかの方だった。

 このかの白いお尻に、俺の手形が赤く浮かび上がっている。
 それほど強く叩いたわけではないが、このかにとっては想定外の出来事で精神的ショックは大きく与えることが出来た。

 反射行動としてこのかは身をよじろうとし、そのせいで体奥深くまで刺さっていた肉の杭がこすれる。
 同時に俺に髪を引かれていることを忘れて、逃げようと前に動いたことによって、体が大きくのけぞらされた。

「あっ……あああっ、ああっ!!」

 このかは今まで聞いたことのない声を上げた。
 意味をなしていないうめき声みたいなものだが、最も雄弁な声でもあった。

 俺はこのかに対して手を挙げることはしてこなかった。
 処女を奪ったときは乱暴だったが、殴ることはもちろんひっぱたくこともなかった。
 乳首を強い力で捻ったことはあるが、快楽を与えるために付随した暴力以外は何もしてこなかった。

 このかにとっていわば、俺に初めて意味のない暴力を振るわれたことになる。
 だが、しかし、このかはそれにご満悦のようだった。

 絶頂を経験したかのように、背筋がゾクゾクと震え、開かれた口からは涎がだらしなく垂れている。
 表情はここからではよく見えないが、呆けているはずだ。

 このかの尻に紅葉を貼り付けた手をそろそろと挙げ、このかの口の中に無遠慮に人差し指をつっこんだ。
 このかの溢れた涎をスパゲッティのように巻き取り、それを再びこのかの口の中に戻していく。

 自分の体外に出されたものをまた体内に戻す行為に、このかはどう感じたのか、まだわからない。
 ただ俺は少し興奮した。

「もっひょ……もっひょ、ふって」

 このかは俺の指が口の中にあるにもかかわらずしゃべった。
 ひょっとしたら指をかんでしまうかも、ということは考えられたはずだ。
 ということは、あの優しいこのかが、自身が愛を向けている俺の指をかんでしまう可能性を無視してまでおねだりするような、
 そんな強い快楽を、さっきのお遊びのように軽いスパンキングがもたらしたというわけだ。

 実際、少しこのかに指をかまれた。
 流石にこのかも自重していたのか、あまがみ程度だったが、それはそれで少し物足りない感じがする。

 ただお返しとばかりに、俺はこのかの首元にかぶりついた。
 それほど強い力ではなく、とはいえ、歯形がしっかり残る程度に歯を立てる。

 今度はさっきほど劇的というわけではないが、それでもこのかは体を震わせて感じていた。



 ちらりと刹那の姿が見えた。
 刹那は床に座ったまま、このかと俺を見上げている。
 その口は、何故だか大きく開かれて、何かもぞもぞ動いている。
 別にしゃべっているわけではなさそうだ。

 恐らくは、眼前に広がる淫靡な光景によって喚起された妄想の中で性行為に没頭している名残だろう。
 よく見ると、口の中で舌が揺れ動いている。
 妄想の中では、刹那の目の前にあるのはこのかの唇か、それとも陰唇か。
 視線が一定していないから、どちらであるかは判別しがたい。

 もはや刹那は前後不覚状態にあるようだった。
 切ない、というかもはや獣じみた吐息を漏らす、このかを見ても必死に自慰行為に没頭している。
 妄想と現実の違いがわからなくなっているだろう。
 完全に、今このかを嬲っているのは自分だ、と思いこんでいるかもしれない。

 背中から冷水をぶちまけて、妄想の世界から引き戻してやろうか。

 ……いや、それはもうちょっと後にしておこう。
 より深い妄想の世界に浸らせてからの方が、精神的ショックは大きいはずだ。



 そろそろ本番前のお遊びは終わりにしよう。
 このかの細い腰に手を回し、そっと体を持ち上げさせる。

「……ふっ……くぅ……」

 このかが切なげな声を漏らして、自分自身でも動こうとする。
 柔らかい肉の輪が収縮をしながら、上がっていくのを感じる。

 このかの中から出てきた部位からは、暖かい液体に包まれている。
 液体が重力に従ってこぼれ、外気に晒されてひんやりと冷える。

「くぅっ……」

 ずん、と落ちる。
 また再び何度も触れているところに触れた。

 最初はこの程度でいいだろう。

「このか、激しくするぞ」
「はっ……はい……ウチを、春原はんの好きなようにして……」

 手を伸ばし、このかの体を上げる。

「んっ……んんっ……」

 このかがわずかに耐えるように唇をかんだ。
 拒絶から耐えようとしているわけじゃなくて、次に訪れる大きな波に乗るためだ。

 ずん、と落とした。
 このかが快楽に悶える声を漏らす。

 今度は休み無しでこのかの体を持ち上げる。

 最初の方こそストロークは長かったが、徐々にサイクルが早くなる。
 このかも積極的に動き出し、ぴょんぴょんとウサギ跳びをしているかのように俺の腰の上で跳ね始めた。

「あっ……きもちっ……」

 このかの綺麗な黒い髪が跳ね、汗がわずかにはじけ飛ぶ。
 制服を着ているために、胸が上下する様はあまりよく見えない。

 このかが切なげで柔らかい肉でもって俺を絞り上げていく。

 ぱんぱんぱんぱん、という肉と肉とがぶつかりあう音が部屋に響く。

 刹那は焦点を結んでいると思いがたい目で、肉の交合を見つめ、一心不乱に腰元の存在しない一物を擦り上げている。
 とんでもなく寂しい行為だが、まあ、こいつにはこういうことしか出来ないのだから、しょうがないだろう。

 このかが自分で腰を動かすのと、俺が自分で腰を動かすのは、息のあったものだった。
 そりゃあまあ、この部屋に入ってくるまでの間、何度もリハーサルを繰り返したんだから、当たり前だろう。

「あっ、春原はんっ! そ、そこええ、そこが、そこがええんやっ!」

 このかが軽く腰を持ち上げている状態……つまり挿入が比較的に浅い状態でこのかは歓喜の声を上げた。
 やや状態をのけぞり、亀頭がこのかの感じる部位に当たっているのを感じる。

 ざらざらとした天井を、このかのリクエスト通りに何度も何度も集中的に擦り上げる。

「だめっ、もう、らめやぁっ! 春原はん、春原はんっ、愛しとるっ!
 もう、ウチ、春原はん無しじゃいけていられへんようになったっ!」
「よし、そろそろ出してやるぞ、このか」
「出してぇっ! 春原はんのエッチな液、ウチの中に、ぶちまけてぇっ!」

 ずりゅう、と再びこのかの最奥に押し込み、精液を容赦なく放った。
 毎度毎度感じる感覚だが、一際大きい虚脱感に襲われ、その直後に何もかもわずらわしくなる思考が走る。
 そんな感覚なんかも楽しみながら、俺はこのかを深く抱きしめた。
 このかも俺と同じタイミングで達していたようで、俺が折角抱きしめてやったというのに、反応が微かに鈍かった。



 刹那もまた、俺達が絶頂を迎えたときに、絶頂したらしい。
 目がうつろになり、何故だか薄ら笑いを浮かべている。

 このかを脇にのける。
 膣から一物を抜くときに、このかは名残惜しそうに抵抗したが、それを無視して横に追いやる。
 非情にこのかをどけても、俺の精液がゆっくり垂れているところを見てしまうのは、男のサガとしてしょうがないことだろう。

 恍惚な表情を浮かべている刹那を見下ろした。
 まだ意識が別世界に飛んでいるようなので、目の前で手を叩いてやると、目が焦点を結ぶようになった。

「よう、気分はどうだ?」
「……ッ」

 刹那は何も言わず、悔しそうに目をそらした。
 心の中の怨嗟の声が、エドのいにっきを使っていないというのに聞こえてきそうだ。

「さて、突然だがな。実は、俺はお前の力のことを高く買ってもいるんだよ」

 刹那はぴくりと反応したが、その後、より一層殺気が強くなっただけだった。

「俺は強いヤツが好きだ。といっても、俺に好意的な強いヤツだけを指すけどな。
 だから、刹那、お前を俺の部下にしたい。
 部下、といっても、まあ、簡単に言えば学園側のスパイになって欲しいってことだ。
 既に何人かスパイはいるが……お前ほどの戦闘能力を持ったやつは誰もいない。
 いざ、ということに学園側と事を荒げる能力を持ったスパイが欲しいんだよ」
「何を……ふざけたことを」
「別にエドのいにっきを使えば、お前を意のままに操る事は出来る。
 だけど、それじゃお前本来の力を振るわせることは出来ないんだよ。
 飽くまで自分自身の意思でなければ、その人間の力の限界まで振り絞ることは出来ないんだ」

 ここでの『力』というものは、技量というものも含まれた意味で用いられている。
 単純な腕力だけならば、逆にエドのいにっきを使った方が出しやすい。
 ただその代わり、対象者の腕に受けるダメージなんかは洒落にならないくらい高い。

 少しうろたえた様子を見せる刹那に、にいっと笑ってみせる。

「もちろん、こういう交渉をしている以上、お前にメリットもある。
 お前の自由意思を買うわけなんだから、それ相応の代物を渡さなきゃ割に合わないからな」

 そういって、俺は俺の膝元でくてっとしているこのかの頭を優しく撫でた。
 さっきの絶頂の余韻に浸っているのか、実に幸せそうな表情を浮かべている。

「もし、お前が自分の意思で俺の部下になるというのなら、このかをお前にくれてやるよ」
「なッ!」
「えッ!?」

 第一声は刹那の方が早かったが、その後の反応はこのかの方が圧倒的に早かった。

「は、春原はん、う、嘘やろ」
「嘘? 嘘って何のことだよ」

 わめかれてもうるさいだけなので、俺はまだ何か言いたそうにしているこのかの唇にそっと指を当てた。
 エドのいにっきで仕込んでいた暗示によって、このかは何の言葉も発せられなくなった。

「ほら、刹那、どうするよ?
 あ、念のために言っておくが、この約束は口約束だけに終わらないぞ。
 ちゃんと書状に契約の後を残して、魔法による束縛を、俺とお前にかける正式なものにする。
 契約後にしらばっくれることは物理的にも魔法的にも無理だから、そこんところは注意しろよな」
「いや……私は……」

 刹那はまだ迷っているらしい。
 男なら即断即決、といいたいところだが、まあ、仕方あるまい。

 涙目で俺に必死に訴えようとしているこのかを、ぐいと引き寄せた。
 膝の上に座らせて、両腕を頭の上に上げさせる。

 背後からふくらみかけの胸を掴みあげ、もう片方の手で足を開かせる。

「ほら、このかの味は俺が保証するぞ。
 肌は間違いなく柔らかいし、肌触りも抜群。
 胸の感度もいいし、膣もほどよくほぐれている。
 アナルは……まあ、まだまだだけど、仕込みがいはある」

 そこでそっと刹那に顔を近づけた。

「それに、このかはお前のことを散々短小だのなんだのと罵倒していたじゃないか。
 このクソアマを奴隷にして、尻をひっぱだきながら、無理矢理犯すのは、最高だぞ?
 今までの無礼な言葉を謝罪させて、それでも許さず痛めつけるのは、男なら誰でも持つ欲求だろ」

 意味もなく小声で言った。
 一旦顔を引き、刹那に向かって、さあ、どうする、とたたみかける。

 刹那はそこまでお膳立てしているというのに、未だに迷っていた。
 とはいえ、視線がこのかの胸と陰部を行き来しているので、もう八割方心づもりは決めているだろう。

「じゃあ、ここでこのかさんから一言」

 このかの唇に再び指を当て、離すとそこからは罵倒の嵐が出てきた。

「せ、せっちゃんとセックスするなんて嫌やぁっ! きっ、気持ち悪いっ!
 春原はん、ウチがっ、ウチが春原はんのスパイでも、何でもなるからっ!
 だから、せっちゃんにウチをやるなんてこと、言わんといてっ!
 せ、せっちゃんも! ウチをもらう、なんてこと、言わん……よね?
 ウチら、幼なじみやもんね? だから……だから、せっちゃんはッ」
「はい、もう黙っててね」

 再びこのかは口を紡いだ。

 刹那は、顔を床に伏せていた。
 よほどショックをうけたのか、何も言わず、涙も流していなかった。
 膝の上に乗っていたこのかを突き倒した。
 このかは床にどさっと落ち、すすり泣きながら、それでも俺にすがろうとしてきた。

「それで、刹那。回答はどうだ?」

 刹那は顔を伏せたまま、かすれた声で何かを言った。

「ん? なんだ、聞こえないぞ」
「あ、あなたの、ぶ、部下になります。
 だ、だから、このちゃんをっ! このちゃんを、私にくださいっ!」

 再び顔を上げた刹那の瞳に映るのは、どちらかというと怒りの感情だった。
 そしてその怒りの配分は、俺に対するものよりも、このかに対するものの方が大きく感じられた。
 このかは真っ青な顔をして、イヤイヤと俺に訴えかけている。

 さーて、いよいよ面白くなってきたもんだ。